後半の「陶のオブジェ的造形作品」では、用途を持たない陶芸作品—オブジェが紹介されている。戦後の1947年に四耕会、48年には走泥社が京都で結成され、前衛陶芸が芽吹いていった。これらの団体は、陶芸と他分野の芸術表現との融合を目指し、素材や技術、制作方法に新たな視点を持ち込んだ。また、この時期の陶芸はたんなる実用品の枠を超えて、芸術的表現の場として変容を遂げた。
走泥社のリーダー的な人物だった八木一夫は、黒陶の技法を用いた作品を制作した。黒陶は、低温で不完全燃焼させることによって、窯内で発生したすすが土に吸着し、黒くなるという特徴を持つ。この技法を使うことで、収縮や変形が少なく、より精密なかたちを表現することができる。八木は、この伝統的な技法を現代的な視点で逆手にとることで、独自の表現を生み出した。
同じく走泥社に所属していた川上力三の《座 1981》(1981)も、陶芸が持つ伝統的な枠組みを超えた作品だ。陶でつくられた座布団のうえに置かれた椅子が割れた姿が描かれたこの作品は、反権力的なメッセージを込めた造形となっている。
また、三輪龍氣生の作品《ハイヒール》(1979)も、伝統的な萩焼の土と釉薬を使用しながらも、現代的な感覚を取り入れた陶芸作品の例として紹介されている。轆轤でつくられたパーツを組み合わせてハイヒールのかたちをつくったこの作品は、陶芸で作家自身の内面性を表現する方法を直感的に示している。
最後の展示室では、主にスミソニアンで紹介された壺の作品が集まっている。島崎は、「轆轤を使えば完璧なかたちをつくることができる」と話す。しかし、このセクションで強調されるのは、器のなかに作家としての思想を込めることで、その形が何を意味し、どのような形態であるべきかが問われるという点だ。
また、器ではない形態を制作する際には、その背後にある考え方や理由も重要であり、陶芸固有の表現にこだわらない自由な土の使い方も現代陶芸の魅力だ。「器とオブジェは地続きにつながっており、そのような焼き物の世界における作家たちの異なる角度や深さを、作品を通じてひとつずつ検証していくことで、現在の陶芸の面白さをより深く感じていただけたら」と島崎は述べている。
1970年代から80年代にかけての日本の陶芸の変遷を反映しており、現代陶芸における作家たちの革新的な試みを紹介する本展。日本の陶芸がどのように伝統を超えて進化してきたのか、そしてそれがいかに現代美術と交差しているのかをぜひ会場で確かめてほしい。