4階に展示される《アーカイヴ部屋そのもの》は、本展の背後にあるビューイング・ストレージを指し、展示全体における手がかりとして機能している。ここでは、初期の絵画や彫刻作品、過去の展覧会のために制作した原稿などが展示されており、鑑賞者はこの「部屋」を通じて、雨宮の作品の背後にある思想やプロセスに触れることができる。
最後の展示室では、東日本大震災から10年後に制作されたヴィデオ・インスタレーションで、2021年のReborn-Art Festivalで発表された《石巻 13分》の記録映像が紹介されている。石巻市日和山公園内にある旧レストランのスペースに展示されたこの作品は、プログラミングに従って様々なスクリーンやオブジェクトにテキストが徐々にスクロール表示され、また、作家が当時居住していたベルリンで撮影された映像も流れた。作品の終わりには、部屋のブラインドがゆっくりと上がり、日和山公園と遠くの桟橋の景色が徐々に現れた。
展覧会を見たあと、雨宮がVR作品で語った「ワタリウム美術館という場所は、先人たちから未来へのポジティブな『墓標』」という言葉が印象に残った。「墓標」の意味について雨宮に聞くと、彼はそれを、物理的な死後の記録だけでなく、アートにおける永続的な影響を象徴するものだと考えていると答えた。また、「墓標」は自身の亡き母への想いを反映しており、過去の偉大な芸術家を弔い、その影響を後世につなげていく美術館の本質をも象徴しているという。
なお、会期中毎週土曜日の17時から雨宮による「人生最終作のための公開練習」というパフォーマンスが行われ、2025年1月11日の土曜日23時から翌日の5時までには、約1年前に同館で個展を開催したアーティスト・梅田哲也と雨宮のトークイベントも予定されている。見るたびに新たな発見がある雨宮の作品。この機会にぜひ、実際にワタリウム美術館へ足を運び、その独自の世界観を体感してほしい。
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