阪神・淡路大震災30年 企画展「1995 ⇄ 2025 30年目のわたしたち」(兵庫県立美術館)開幕レポート。あの日、何を失ったか、これから何を残せるのか【5/5ページ】

 2014年に世を去った國府理は、東日本大震災によって発生した原発事故から発想した、水中で自動車のエンジンを動作させる作品《水中エンジン》(2012)で知られる作家だ。

展示風景より、國府理《水中エンジン》(2012)のパーツ

 会場では熱源を水中で冷やしながらエネルギー源を稼働させるという、原子力発電の仕組みにも似た《水中エンジン》のパーツのほか、自然の巨大なエネルギーとの向き合い方を考え続けた國府が、作品のアイデアを記したドローイング群が展示されている。

展示風景より、國府理のドローイング

 森山未來と梅田哲也は、本展会期と同時にパフォーマンス「森山未來、梅田哲也〈艀(はしけ)〉」を実施。本展では関連する作品を会場で展開している。

展示風景より、森山未來と梅田哲也の作品

 森山と梅田は、これまで美術館のホワイトキューブのような場にとらわれない表現活動を行ってきた。今回ふたりは、展示室に用意した黒電話、そしていたるところに置かれたラジオから音声を流す。そこには過去の絶望の話とも、これからの希望の話ともとれる言葉が紡がれている。ぜひ、会場で耳を傾けてもらいたい。

展示風景より、森山未來と梅田哲也の作品

 同館館長の林洋子は本展について次のように語った。「当事者の声だけではなく、その周縁にあったものを、周縁にあるからこそ生み出せるものを、アーティストたちは汲み取ろうとしてる。震災の記憶とともに、そこからこそ未来へ引き継げるものがあるはずだ」。現代美術の力が試される、次の10年、50年、100年に、震災が我々に与えたものを問いかける展覧会といえるだろう。

編集部

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