阪神・淡路大震災30年 企画展「1995 ⇄ 2025 30年目のわたしたち」(兵庫県立美術館)開幕レポート。あの日、何を失ったか、これから何を残せるのか【4/5ページ】

 会場で束芋は「家」と「学校」という他者と生活する場をモチーフとした映像作品を展示。両作とも、家と学校が箱庭的な空間としてとらえた作品だ。年齢を重ね、震災をより客観的に見られるようになった束芋が、当事者の外部には何があるのかを、アニメーションによって探っている。

展示風景より、束芋《神戸の家》(2024)

 現代社会における女性の存在や意識に焦点を当てて制作を行ってきたやなぎみわ。妻・イザナミと夫・イサナギが黄泉平坂(よもつひらさか)で争い、巻き込まれた人々が生き死にする『古事記』を題材とした写真と、ライフワークとして取り組んできた野外劇の映像を展示している。

展示風景より、奥がやなぎみわ「女神と男神が桃の木の下で別れる」シリーズ(2017)、手前が《Juggling with Peaches Ⅰ》(2024)

 やなぎはイザナミが男神たちに投げつけられて動きを封じられた「桃」を題材に、写真シリーズを撮影してきた。写真や劇を通して、神話を語り直すことで、未曾有の災害に新たな視座を与える契機にもなりそうだ。

展示風景より

編集部

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