栗林は近年、タンカーを様々な生態系が共存するひとつの場として、また思想や作品を運ぶプラットフォームとしてとらえた「Tanker Project」(2021〜)を実施してきた。「Tanker Project」は、栗林がかつて、オーストラリアでダイビングをした際に、海中に廃棄されたタンカー群を見たときの経験から着想している。役割を終えた巨大なタンカーは、しかしどこか未来への大きな可能性を感じさせるものだったという。以降の栗林は、タンカーという存在を様々なものを入れて航海できる依代としてとらえ、作品を展開した。
館の入口には、このタンカーの艦首を模した造形物が設置され、観客を船内へと誘う。本展において栗林は、改修中の美術館をタンカーに見立てることに成功している。
館内に入ると、チケットカウンターの前では《Tanker Project -Barrels》(2024)が展開されているのが目に入る。オイルを張ったドラム缶と、ガラスのなかで切断された植物を組み合わせたインスタレーションだ。本作を上から覗き込むと、オイルに映った植物がオイルのなかへと深く伸びていくようにも見える。これは、本展のタイトルである「Roots=根」とも接続する意味を有するといえるだろう。