美術、音楽、演劇映画など芸術11部門において、優れた業績を上げた人物に対して贈られる令和4年度(第73回)芸術選奨。その受賞者が発表された。文部科学大臣賞は19名、文部科学大臣新人賞は11名となった。
美術部門では、栗林隆と沢村澄子が大臣賞に選出。また、同部門の新人賞には中﨑透が選出された。
栗林の贈賞理由については、「造形的な完成度は高くセンシティブで、徹底したリサー チと行動力に裏打ちされた思考と社会批評精神の結晶であり続けている」とした。そのうえで、昨年のドクメンタ15でシネマキャラバンとたもに発表した《元気炉四号機》を評価。「定期的にリサーチを継続してきた福島第一原発の形を模した体験型スチームとして、人間のエネルギーの根源はあらゆる感情から湧き上がる元気を由来と考え、原発のエネルギーと重ね合わせ、誰もが裸で体感できる作品にした」と評した。
書家として活躍する沢村の贈賞理由は次のようなもの。「書の流派に所属することなく、個展を中心として自己の表現を提示し続けている書家である。その作品は、自分にとって切実な言葉をいかに書くかという、言葉と書のせめぎあいの場に成立している」。
そして新人賞の中﨑については「地元水戸芸術館の個展では、地域住民から集めたオーラルヒストリーを看板やネオン、過去の日常の断片と共に展示、それらの存在理由と価値の変容を提示した」と個展を評価。「一地域の個人的物語が、地方都市の画一的既視感を呼び覚ます。彼の捉えどころのない多様性は何より現代美術の特質を表している」とした。
ほかにも芸術振興部門では「愛知県芸術劇場×Dance Base Yokohama パフォーミングアーツ・セレクション2022」を手がけた、舞台芸術プロデューサーの唐津絵理が、映画部門では『シン・ウルトラマン』などを手がけた特撮監督の尾上克郎が大臣賞を受賞。また、メディア芸術部門では新海誠が『すずめの戸締り』の、評論等では東京都江戸東京博物館の都市歴史研究室長である岡塚章子が「帝国の写真師 小川一眞」の成果を認められ、大臣賞を受賞した。