第2 部「色彩の現在」
続く第2部の出品作家は、草間彌生、ヴォルフガング・ティルマンス、 丸山直文、グオリャン・タン、山口歴、流麻二果、門田光雅、坂本夏子、山田航平、川人綾、伊藤秀人、中田真裕、小泉智貴、山本太郎。
本章は、現在、日本や世界で活躍する作家たちがいかに色彩と向き合っているのかを紹介するもの。作家選定については、「本物の色を追求していると感じられる作家たちを選んだ」(内呂)という。
ティルマンスの「フライシュヴィマー」シリーズは、カメラや被写体、ネガすら使わずに、暗室の中で印画紙を露光させることで生み出した写真作品。また丸山直文の《morphogen》(1994)は綿布に張った水の上にアクリル絵画を滴らせ、水が乾くことで模様が画面に定着するというものだ。水の動きが絵具を拡散させ、画面全体を淡く彩る。
川人綾の絵画は、格子状に塗り重ねられた色彩が大きな特徴。「制御とズレ」をテーマに、大島紬の織りや模様の引用を出発点とし、泥染のグラデーションや蚊絣(かがすり)の点描表現を引用しつつ、見事な錯視効果を表出させた。
日本の古典文学・芸能をベースに、現代風俗を融合させた「ニッポン画」を提唱する山本太郎は今回、琳派のモチーフとアンディ・ウォーホルにオマージュを捧げるシルクスクリーンをはじめ、横山大観の《不二霊峰》(1940年代)と接続する《羽衣バルーン》(2012)など、ポップな色彩を見せてくれる。
本展で唯一、ファッションデザイナーとして参加した小泉智貴は、オーガンジーによる大胆なボリュームと鮮やかな色彩の作品で知られている。本展で大きな存在感を放つ《Infinity》(2024)は、170ものカラーバリエーションから選ばれ、パッチワークのように紡がれたオーガンジーの色彩は、複雑ながら見事な調和を見せる。そしてその圧倒的なサイズからは、ファッションとアートのボーダーを超えようとする小泉の意欲が感じられるだろう。
最後を飾るのは、草間彌生による日本初公開のミラールーム《無限の鏡の間-求道の輝く宇宙の無限の光》(2020)だ。無限に反射する空間の中に設置された膨大な数の「水玉」その色を次々と変え、鑑賞者をどこか別の世界へと誘う。「色」をめぐる展覧会の締めくくりにこれ以上ないほどふさわしい作品だ。