フェミニズム・アートを美術史の流れのなかで語る
小林は、ニューヨークのニュー・ミュージアム・オブ・コンテンポラリー・アートで見たジュディ・シカゴの回顧展「Herstory」で、パワーを得ながらも、数世紀にわたる80名以上の女性/ジェンダークィアアーティストを紹介する最後の展示室で日本の女性作家がほぼ取り上げられていないことを目の当たりにし、研究や展示を通してもっと発信していく必要があるのではないかと感じ、その思いが企画のモチベーションにもなったという。
今後の展開について尋ねると、「映像だけでなくパフォーマンスに関連する実践も含め、この企画を通してほかの重要な作家も見えてきたので、コレクションの拡充にもつなげていけるといいなと思っています。当館の特徴は、19世紀末から現在に至る美術史の流れのなかでこうした作品を見せられるということ。日本のフェミニズム・クィアにまつわる作品をこれからどう位置づけていくか、実験的な要素も含みながら今後もやっていければと思います」。
会場にはほかにも当時の作家インタビューなどの資料も展示されており、一人で鑑賞して考えを深めても良いが、ほかの人と意見を交換することもおすすめしたい。自分が気づかなかったことや異なる意見に触れることで、作品とともにフェミニズムへの理解を深めることができるだろう。遠藤×百瀬の作品が示すようにフェミニズムは相手との関係性でもある。困難を伴っても、最後のキーワードである「対話」について、言葉以外の方法も含めたアイデアと行動の積み重ねがやはり必要なのだと感じた。12月15日にはトークイベントも開催されるため、ぜひこちらの機会も活用してほしい。