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「発酵文化芸術祭 金沢―みえないものを感じる旅へ―」レポート。「発酵」をテーマにしたアートで金沢を感じる【5/6ページ】

白山市 鶴来エリア:北陸鉄道石川線と廃線区間、「萬歳楽」本店、横町うらら館

 金沢中心区から、電車・車で30分ほどの白山市鶴来は、白山比哶(ひめ)神社の門前町として栄え、多様な醸造業が盛んだった発酵のまちだ。金沢-鶴来間を結ぶ北陸鉄道石川線と、現在廃線となった区画では、with Rhythmsと深田拓哉が作品を掲示する。

旧加賀一の宮駅駅舎

 with Rhythmsは、沿線と廃線区画を舞台に、「故郷」「景色」「不在」といった言葉をめぐるインタビューと車内の音が交錯するサウンドインスタレーションと、それらをもとにした美しいスコアドローイングを始発駅と廃線の旧駅舎に展開する。

旧加賀一の宮駅駅舎内では時間制でサウンドインスタレーションが楽しめる
北陸鉄道石川線野田駅の展示風景より、with Rhythms《score #01》
撮影=上田陽子

 深田は、始発駅の2番ホーム(立入不可)と廃線跡に作品を展示。皮肉とユーモアたっぷりのインスタレーションは、発酵のまち・白山が時代のなかで失ったものを可視化する。

北陸鉄道石川線野田駅2番ホームより、深田拓哉の作品の展示風景
撮影=上田陽子
鶴来線廃線跡での深田拓哉《ここはぼくたちのもの(そしてそうじゃない)》。鉄骨と看板が作品

 およそ240年前から酒造りをしているという「萬歳楽」では、石川県を拠点に、「漆」を用いて絵画制作を続ける沖田愛有美の作品がみられる。漆を「自然と人間を媒介する共同制作者」ととらえる彼女の艶やかな漆の絵画のうち1点は、触って微妙な起伏を体感できる。掻き取り、発酵、精製を経た漆という素材は、酵素の働きによって会期中も緩やかに変化し続けているので、できるなら時間をおいて再訪してみたい。

萬歳楽本店外観
萬歳楽本店の展示風景より、沖田愛有美の作品
萬歳楽本店の展示風景より、沖田愛有美《まだ暖かい牛糞を枕に眠る》

 約190年前の商家を無料休憩所として利用している横町うらら館では、「鶴来現代美術祭」のアーカイヴを確認しよう。各地の芸術祭に先駆けて1991〜99年に7回にわたって現代美術の芸術祭が開催されていた。世界的に知られたキュレーター ヤン・フートの貴重なインタビュー映像や資料、今回再発見された作品のいくつかが見られる。なかなかアヴァンギャルドな作品たちは、当時の息吹を感じさせてくれる。

横町うらら館の展示風景より、鶴来現代美術祭アーカイヴ
横町うらら館の展示風景より、鶴来現代美術祭アーカイヴ展示。当時出品された3作品がみられる
横町うらら館の展示風景より、鶴来現代美術祭アーカイヴ展示。作者、タイトル不詳の作品。今後の調査が期待される

編集部

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