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「発酵文化芸術祭 金沢―みえないものを感じる旅へ―」レポート。「発酵」をテーマにしたアートで金沢を感じる【2/6ページ】

東山-大手町エリア:大手町洋館・髙木糀商店

 太平洋戦争の戦火を免れた金沢には歴史的建造物がいまも生きている。大正から昭和時代に金沢大学の医学博士だった人物が1933年に建てた洋館もそのひとつ。ドイツ風のデザインに、日本の伝統的な木造や工芸の技法を駆使し、贅を尽くした建築は、当時の姿をとどめている。地元の人も入る機会がないという貴重な空間には、その地に根差した文物を活用して作品を生み出す遠藤薫が、藍染や陶器など食以外の発酵をモチーフに「壊す、枯れる、そして循環する」を表現する。

大手町洋館外観

 長年の雨漏りに加え、先の震災で天井の漆喰が崩落した応接間には、彼女が滞在中に訪れた珠洲市で集めた焼き損じのため壊された陶片が、屋敷の破片と並置される。それは、発酵した土の粘度を活用し焼かれた器が土に戻らないという事実とも呼応しながら、壊す/壊れるの関係性を問う。金沢で集めた古布は、土中に埋めて朽ちかけたものを掘り返して微生物の働きを示し、あるいは同地の糀専門店・髙木糀商店の甘酒を使用して藍染にして発酵の力をみせる。静かで緻密ながらさりげない空間は、多層の意味や象徴を帯びて、時の流れを濃密にたたえた空間に響き合っている。

大手町洋館の展示風景より、遠藤薫《三六〇、六〇、九〇、を(内科室にて)》
大手町洋館の展示風景より、遠藤薫《三六〇、六〇、九〇、を(内科室にて)》
大手町洋館の展示風景より、遠藤薫《三六〇、六〇、九〇、を(内科室にて)》

編集部

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