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時を超えるクチュール。香港のM+が見せる、デザイナー グオ・ペイの創造とアートの対話

香港M+で、中国を代表するクチュールデザイナー・郭培(グオ・ペイ)の大規模展覧会「Guo Pei: Fashioning Imagination」が9月21日から開催される。伝統工芸を再解釈し、未来に語り継がれる作品を創造するグオのアプローチを、会場からレポートする。

文・撮影=王崇橋(ウェブ版「美術手帖」編集部)

展示風景より

 中国を代表するクチュールデザイナーのひとりである郭培(グオ・ペイ)。その東アジアにおける初の大規模展覧会「Guo Pei: Fashioning Imagination」が、9月21日から香港のM+で開催される。

 グオは、文化大革命の真っ只中である1967年に北京で生まれた。改革開放の時代に中国で登場した初のファッションデザイナー世代の一員として、1997年には中国初のクチュールスタジオ「玫瑰坊(ローズ・スタジオ)」を北京に設立。2015年、ニューヨークのメットガラでリアーナがそのオートクチュール作品を着用したことで、グオは一躍世界的な注目を浴びた。

展示風景より、リアーナが2015年にメットガラで着用したグオ・ペイのオートクチュール《イエロークイーン》

 オートクチュールの作品に加え、グオは2008年の北京オリンピック表彰式用の衣装や、毎年恒例の中国中央電視台の新年ガラのホストやパフォーマーの衣装も手がけており、彼女はもっとも影響力のあるファッションデザイナーのひとりに数えられる。

 本展は、M+のデザイン・建築部門主任キュレーターである横山いくこがキュレーションを担当し、グオおよびローズ・スタジオとの協力で企画された。M+のアシスタントキュレーターであるウェン・ビと、キュラトリアルアシスタントのマンキット・ライがサポートしている。

展示風景より

 プレス内覧会にて横山は、「グオ・ペイの作品を、歴史的なファッションというよりも、視覚文化やデザインとしてとらえている。それが今回の展覧会の方向性にもなっている」と語り、さらに彼女を次のように評価している。

 「グオの作品は、中国の伝統工芸技術を蘇らせるだけでなく、独自の現代的な中国の工芸を創り上げている。例えば、日本の職人たちは100年前と変わらない技術を守り続けていることが多いが、グオの中国刺繍はその伝統を新たなかたちで現代に生かしている」。

展示風景より

 展覧会は「生命の歓び」「東洋の新しい物語」「空間を超えて」「神話のエーテル」「夢と現実」という5章構成。各章ではグオの様々な時期のコレクションが2つずつ展示され、合計44着のオートクチュール作品が紹介されている。さらに、本展ではM+のコレクションから絵画、写真、立体作品なども展示されており、これが本展の特徴のひとつとなっている。

 その意図について横山は、「本展では、グオの作品を年代順に並べるのではなく、回顧展的な形式を避けた。彼女の服づくりに対する情熱とこだわりは一貫しているため、時系列ではなく、M+のコレクションとの対話を重視した構成にした」と述べている。

展示風景より

編集部

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