「両大戦間のモダニズム:1918-1939 煌めきと戸惑いの時代」(町田市国際版画美術館)レポート。20世紀の光と影を版画表現で追う【4/5ページ】

新たな表現を版画に見いだす。3.モダニズムの時代を刻む版画

 この時期、写真や映画が新しい表現として脚光を浴びるなかで、敢えて旧来からある版画で表現を追求したアーティストが、「抽象表現」「挿絵本文化」「シュルレアリスム」のキーワードから紹介される。

 古い慣習を捨て新時代へと進むモダニズムと、近代文明を捨て伝統に立ち返る「秩序への回帰」のふたつの動向がせめぎ合う第一次世界大戦後のヨーロッパで、伝統的な写実から離れたアーティストは抽象表現へ向かい、その版画は前衛的なイメージとして広がっていく。ピエト・モンドリアンと並びフランティシェク・クプカの版画が興味深い。

展示風景より、右からピエト・モンドリアン『シルクスクリーン12枚のポートフォリオ』《色面によるコンポジション No.3》(1957、原画1927)、ソニア・ドローネー《赤の大プロペラ》(1970、ともに町田市国際版画美術館)
展示風景より、フランティシェク・クプカ『黒と白の4つの物語のために』(1926、町田市国際版画美術館)

 いっぽう、パリでは挿絵本文化が花開き、古典的な技法が改めて注目される。アンリ・マティスパブロ・ピカソなど巨匠たちも多く版画を制作した時代。ラウル・デュフィらが設立した独立版画協会は版画のリバイバルをけん引する。協会のメンバーとして、独自の技法を編み出した長谷川潔をみるのも新鮮だ。

「3-2 挿絵本文化:独立版画家協会と版画のリバイバル」展示風景より、マティス、ピカソの作品
展示風景より、長谷川潔 『竹取物語』(特別会員版)(1926-33[1933刊]、町田市国際版画美術館)

 シュルレアリスムでは、マックス・エルンストのコラージュを挿絵にした「コラージュ小説(ロマン)」が原画と併せて見られる嬉しい機会だ。このほかマン・レイのカラフルなポショワール『回転扉』や、サルバドール・ダリの銅版画『マルドロールの歌』の連作も紹介される。

展示風景より、マックス・エルンスト『カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢』(1930年刊とコラージュ原画、ともに町田市国際版画美術館)
「3-3 シュルレアリスム:版に刻まれた偶然、幻視、強迫観念」展示風景から マックス・エルンストのコラージュ・ロマンとマン・レイの『回転扉』

編集部

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