伊藤若冲の新発見。絵巻《果蔬図巻》を福田美術館が公開【2/2ページ】

「非常に貴重な作品」

 詳細を見ていこう。この大作は菊の花と思われるものから始まり、柑橘類や林檎、瓜、茄子、茗荷、葡萄、枇杷、柘榴、糸瓜、蓮根、スモモ、百合根、サボテン、ホオズキ、トウモロコシ、柿、桑の実、南瓜、冬瓜など、じつに40種類におよぶ果物や野菜が描かれている。これらが四季に関係なく、「若冲の好きなように」(岡田)配置されている点が特徴的だ。また、描かれた野菜や果物の大部分や彩色法は《菜蟲譜》と共通するという。

伊藤若冲《果蔬図巻》(1791)の部分
伊藤若冲《果蔬図巻》(1791)の部分
伊藤若冲《果蔬図巻》(1791)の部分

 巻物の最後には上述の梅荘顕常が直筆で書いた跋文があり、そこで本作を讃えるとともに、顕常と若冲の旧知である大阪の森玄郷という人物からの依頼で描かれたこと、森の没後に息子の嘉続から跋文の依頼を受けたことなどが記されており、貴重な資料ともなっている。

伊藤若冲《果蔬図巻》(1791)の跋文

 本作について、辻は「色の対比をきちんと考えた彩色が興味深い。初々しさを感じる」とのコメントを寄せている。また岡田は、「一つひとつ彩色が施された果物や野菜は、若冲の確かな観察眼と優れた描写力によって描かれている。70代の彩色された作品は数が少ない。比較検討することで若冲の絵の面白さや画業があたらめて検討できる材料として非常に貴重な作品」と評しつつ、こう語る。「晩年の若冲がこれほど綺麗な絵を描いていたというその感覚の瑞々しさを見ていただきたい。若冲の野菜に対する愛情も感じられるのでは」。

 本作は、福田美術館が新たなコレクションとして収蔵。今年10月12日に開幕する企画展「開館5周年記念特別展 京都の嵐山に舞い降りた奇跡!伊藤若冲の激レアな巻物が世界初公開されるってマジ?!」展にて一般公開される。

編集部

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