伊藤若冲の新発見。絵巻《果蔬図巻》を福田美術館が公開

京都・嵐山にある福田美術館が、新たに発見された伊藤若冲による絵巻を初公開した。

文・撮影=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

新たに発見・収蔵された伊藤若冲《果蔬図巻》(1791)

「果蔬図巻」

 今年開館5年を迎える京都・嵐山の福田美術館が、伊藤若冲作(1716~1800)の新発見の絵巻を披露した。

 伊藤若冲は言わずと知れた江戸時代の絵師。京都の青物問屋「枡屋」の長男として生まれ、裕福な環境のもと、独学で作品を制作した。その作風は細部まで描き込まれたものが多く、極彩色で彩られた絹本着色の作品や、即興的な筆遣いとユーモラスな表現が特徴の水彩画は、日本美術史上でも異彩を放つ。

 今回披露された作品は1791年、若冲が76歳のときに描いた全長277センチ(跋文を加えると332センチ)あまりの絵巻で、《果蔬図巻(かそずかん)》と名付けられた。若冲としては珍しい絹本着色で、若冲ならではの美しい色彩を用いて様々な種類の野菜と果物が描かれた絵巻だ。

福田美術館で披露された伊藤若冲《果蔬図巻》(1791)

 本作はもともとヨーロッパの個人が所蔵していたもの。2023年2月に大阪の美術商から福田美術館に画像確認の依頼があり、7月に真贋鑑定を行ったうえで、同年8月にオークション会社経由で所有者から購入したという。その後、4ヶ月をかけて剥落などの応急処置が実施された。

 福田美術館学芸課長の岡田秀之は、「まさかこんなものがあるとは思っていなかった」という。問題となるのは真贋だが、岡田は本作を真筆とした理由として、巻末の署名や印が他の作品と一致すること、翌年に描かれた《菜蟲譜》と表現技法が酷似していること、そして若冲と親しくしていた相国寺の僧・梅荘顕常の跋文があることなどを挙げている。

福田美術館学芸課長の岡田秀之
巻末の署名と印

編集部

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