イラストレーター・中村佑介が活動20周年を迎える今年、「中村佑介20周年展」が東京・後楽園のGallery AaMoにて開幕した。会期は2023年1月9日まで。
中村佑介は1978年兵庫県生まれのイラストレーター。『謎解きはディナーのあとで』『夜は短し歩けよ乙女』などの書籍の装画で知られ、今年度は教科書『高校生の音楽』の表紙も手がけている。画集『Blue』『NOW』は13万部を記録、CD ジャケットのアートワークのみを収めた全集『PLAY』も好評を博している。
本展は、全国各都市を巡回した活動15周年展「中村佑介展」に続いて、中村の活動の軌跡を展示。完成イラストをはじめ、着色前の線画(原画)やアイデアスケッチなど606点が公開されている。
会場は「中村佑介展 BEST of YUSUKE NAKAMURA」(2020年)に続き、Gallery AaMo。足を踏み入れるとまず、「ASIAN KUNG-FU GENERATION」「さだまさし」といったアーティストのCDジャケットが並ぶ。完成イラストと原画が並ぶことで線と着彩の個性が感じられるほか、完成までの過程も紹介するパネルや壁一面に引き伸ばされたイラストレーションなど、見どころ満載だ。
続いて、「森見登美彦」「東川篤哉」といった作家のコーナーが展開。『謎解きはディナーのあとで』『夜は短し歩けよ乙女』など、中村の装画で知られる作品のアートワークが所狭しと並ぶ、贅沢な展示となっている。
このコーナーで最初に目に入るのは『四畳半タイムマシンブルース』にちなんだタイムマシンだ。さらに、『謎解きはディナーのあとで』のビジュアルとあわせて「謎解きは中村佑介展の中で」というパネルで制作活動の裏話を紹介しており、遊び心満載の空間となっている。
そして、音楽の教科書の表紙が並ぶ「OTHER BOOKS」、同名の文芸誌の表紙を総覧できる「きらら」のコーナーにつながっていく。
その後、会田誠をはじめこれまでに描いた有名人の似顔絵を並べた「PORTRATION」、多種種多様な作品に寄せてきた絵を見ることができる「COLLABORATION」といったコーナーが続く。
展示の終盤では、中村佑介という人間を理解するための展示が組まれている。「セーラー服コンプレックス」では、多くのオリジナル作品を通して、初期に多く描かれてきたセーラー服との関係から、若かりし日の中村の葛藤と創作の関係に迫る。「HISTORY」では、デッサンなど活動開始前の作品を展示。意外な一面でありながら原点とも言える作品群を見ることができる。
最後の「COLOR」ではターナーの絵の具に寄せたイラストや、塗り絵BOOKに関する内容が展開。さらに、中村が「女性の肌を塗らないで白のままにする」理由も明かされている。展示の最後には浅田飴のアートワークが展示されおり、先行販売されるカレンダーと連動する2023年限定の卯年にちなんだイラストに見送られる。
会場を訪れたなら、「ここまで隙間がない展示はない」と感じるに違いない。20年かけて中村が世に送り出してきた、現代的でありながらどこか懐かしいアートワークの数々に浸ることのできる空間、ぜひ時間に余裕を持って訪れたい。