1957年に設置された西日本最大規模の総合芸術大学、大阪芸術大学(以下、大阪芸大)。ここに昨年4月設置された、アートサイエンス学科は、「芸術」「情報」「社会」の3領域を横断しながら、21世紀型の新たなクリエイターを育成する場所として、MITメディアラボ副所長・石井裕、チームラボ代表・猪子寿之、「NAKED Inc.」代表・松村亮太郎といった面々が客員教授を務めている。
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そんなアートサイエンス学科に11月27日、新たな学び舎が誕生した。一見、UFOが舞い降りたような有機的な外観をした校舎。設計を手がけたのは、「プリツカー賞」受賞歴もある日本を代表する建築家のひとり、妹島和世だ。
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新校舎は延床面積3176.28平米で、地下1階から2階までの3層構造。大阪芸大のキャンパスは小高い丘の上に位置し、新校舎はこのキャンパスへと続く坂道(通称「芸坂」)を上りきった場所にある。
妹島はこの校舎を設計するにあたり、まず周囲の環境との調和を考えたと話す。「高橋靗一(ていいち)先生が設計した大阪芸大のキャンパスは、地盤につながるような配慮がなされています。(新校舎は)そのキャンパスの突端の場所にありますので、それら既存のキャンパスにつながるように、そしてここが丘の一部であることを感じさせるように設計しました」。
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有機的なコンクリートの曲線がもたらすのは、周囲との調和だけではない。その開放感も大きな特徴だ。これについて妹島はこう語る。
「誰でも入りたくなるような建物になればと考えました。自分なりにうまく着地できたと思います。2010年にローザンヌ連邦工科大学ラーニングセンターを手掛けましたが、こちらは内部はつながっていても、外部に対しては切れていた。その反省以降、どうすれば建物が周囲とつながれるかを考えてきました」。
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校舎を取り巻く巨大な“ひさし”は緩やかな曲線を描きながら地面にも接しており、学生はそこからも内部に入ることができる。あるいは2階の半屋外のオープンテラスなど、妹島が目指した内と外との自然なつながりは随所に感じられる。
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また、学生たちの交流の場となることも校舎の目的のひとつだ。「新学科の学生だけが独占するのではなく、他の学生も立ち寄って交流できる場所になればと思う。そうすることで、より新しいアートが生まれてくるのではないでしょうか」。
内部には3つの大きな展示スペース、4つの講義室、5つのスタジオを擁するこの場所で、今後どのような実践が行われていくのか。建築が学びに与える影響は小さくないだろう。
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