フランスを代表する歌劇場「オペラ座」。作曲からバレエ・ダンス、そして今日まで続く舞台演出に至るまで、「総合芸術」の観点からオペラ座の魅力を紐解く展覧会「パリ・オペラ座 響き合う芸術の殿堂」が東京・京橋のアーティゾン美術館でスタートした。会期は2023年2月5日まで。キュレーターは賀川恭子、田所夏子(アーティゾン美術館学芸員)。
本展は、パリ・オペラ座の誕生から歴史をたどり、現代における舞台美術までを紹介する全6章で構成。展示作品は、フランス国立図書館やオルセー美術館などの協力のもと全273点となっており、アーティゾン美術館開館以来初の大規模海外展となる。
フランスにおけるオペラ座の始まりは、1669年にルイ14世の命で創設された「オペラ・アカデミー」によるもの。アカデミーが設立すると、舞台装飾家と台本作家によって様々な仕掛けが演目中に生み出された。それらは当時の舞台装飾家たちに大きな影響を与え、「華麗であること」「魔法のような魅力があること」「派手であること」が舞台装飾家たちの大きな目標となった。
オペラ座には、オペラ座をかたちづくるあらゆる芸術分野を代表する表現者の存在がある。本展では、それらを紹介することで「総合芸術」の視点からオペラ座の魅力を紐解いていく。例えば、19世紀に活躍したバレエ・ダンサーや舞台美術家などの肖像画が現存していることから、当時からすでにこうした仕事が重要かつ尊敬される存在であったことが伺える。
ほかにも、天井画や衣装デザイン、宣伝美術に至るまで幅広い作品が資料として現存しており、その歴史の奥深さと多面的な魅力が凝縮されている。
20世紀のパリ・オペラ座では日本人の活躍も見られる。日本を代表するファッション・デザイナー、髙田賢三や森英恵。ISSEI MIYAKEのアートディレクターを担当し、現在も衣装デザインの分野で活躍している毛利臣男などもオペラ座で衣装デザインを手がけている。
本展の大きな見どころとしては、19世紀フランスの画家、エドゥアール・マネ(1832〜1883)による2つの《オペラ座の仮面舞踏会》(1873)が挙げられる。これらの作品は1821年からパリのル・ペルティエ通りに存在していた旧オペラ座(ル・ペルティエ劇場、1873年火災で焼失)を題材に描かれたもの。アーティゾン美術館のコレクションとワシントンのナショナル・ギャラリー所蔵の作品がともに展示される、またとない機会だ。
本展の最後には、フランス革命200周年を記念し1989年に落成したバスティーユのオペラ座「オペラ・バスティーユ」が紹介されている。新たな価値観を取り入れながら伝統を更新していくその姿は、フランスが文化大国と言われる所以を伝えている。
なお、アーティゾン美術館では石橋財団コレクション展「アート・イン・ボックス―マルセル・デュシャンの《トランクの箱》とその後」も4階展示室で同時開催中。20世紀に展開した「箱の中の芸術」における多様な様式と豊かなアイデアを目の当たりにすることができる興味深い内容だ。ぜひあわせて鑑賞いただきたい。