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金沢21世紀美術館であらためて向き合う、マシュー・バーニーの名作《拘束のドローイング9》

マシュー・バーニーが1987年より取り組む「拘束のドローイング」シリーズ。その9番目にあたる作品《拘束のドローイング9》を中心に、関連作品を紹介する特別展示が金沢21世紀美術館で9月11日まで行われている。

「特別展示:マシュー・バーニー」展示風景よりCourtesy of Fergus McCaffrey Fine Art (C)Matthew Barney

 金沢21世紀美術館で現在、マシュー・バーニーが1987年より取り組む「拘束のドローイング」シリーズ9番目の作品《拘束のドローイング9》を中心とした特別展示が行われている。

 マシュー・バーニーは1967年サンフランシスコ(米国)生まれ、ニューヨーク在住のアーティスト。1989年イェール大学で医学を修めた後、美術と体育を学ぶ。またフットボール選手の特待生やファッション・モデルなど多彩な経験を有する稀有なアーティストだ。1991年にサンフランシスコ近代美術館で行われた個展以降、彫刻と映像を中心に制作活動を展開。その彫刻作品には整形用の強化プラスチックやシリコンなど独特の素材が使用されることが多く、また映像作品は、緩慢な編集と高揚感のある音が特徴となっている。

 彫刻と映像の密接な関係を通して、身体感覚とバーチャルな情報感覚の融合を試み、現代美術の分野においてつねに注目されてきたバーニー。

 本展の中心となっている《拘束のドローイング9》は、2005年に金沢21世紀美術館で開催されたバーニーの国内初の大規模個展で、「拘束のドローイング」シリーズ(ドローイングを行う際に身体に拘束、制限を与え、そこから生まれる未知のかたちに挑戦するという意味がある)の新作として世界初公開された作品だ。

展示風景より、マシュー・バーニー《日新丸のキャビネット》(2006)
Courtesy of Fergus McCaffrey Fine Art (C)Matthew Barney

 《拘束のドローイング9》のテーマとなっているのは、捕鯨や茶道といった日本文化。その主題をもとに、映画、彫刻インスタレーション、写真など多彩なメディアで構成されている。本展では、映画《拘束のドローイング9》のモニター上映のほか、映画に登場する重要なキャラクターであり場所でもある捕鯨船「日新丸」の立体作品や写真作品、そして同館コレクションの《拘束のドローイング8:誕生の裂片》もあわせて展示。バーニーの、日本文化に対するヴィジュアル的な解釈を多角的に見て取ることができる。

展示風景より、マシュー・バーニー《拘束のドローイング9》(2005)
Courtesy of Fergus McCaffrey Fine Art (C)Matthew Barney
展示風景より、マシュー・バーニー《拘束のドローイング9:日新丸(母船)》(2005)
Courtesy of Fergus McCaffrey Fine Art (C)Matthew Barney

 当時、バーニーとともに本作の制作に挑んだ長谷川祐子(現金沢21世紀美術館館長)は、「重要となったのは、海外アーティストが日本文化を理解するプロセスだった」と振り返る。約1年半もの時間をかけて日本の捕鯨船「日新丸」での撮影交渉を行った末に完成した「拘束のドローイング9」(こちらのインタビューではマシュー・バーニーが当時の思い出を語っている)。

 公開から17年を経ている作品だが、そこに込められた人間の身体や身体内での活動、エネルギー問題といったメッセージは、この時代においてますます重要性を増している。

展示風景より、マシュー・バーニー《拘束のドローイング8:誕生の裂片》(2003)
Collection of 21st Century Museum of Contemporary Art, Kanazawa ©️Matthew Barney

編集部

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