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美術館の枠を超えていく。「ターナー賞2021」展から見る、イギリス現代アートの最前線

世界でもっとも知られた現代アートのアワードのひとつ、ターナー賞。今年のファイナリストにはアート・コレクティブのみが選出され、アーティストの枠を超え、アクティビスト活動が色濃く見られるのが特徴的だ。イギリス・コヴェントリーにあるハーバート・アート・ギャラリー&ミュージアムで展示されている、ファイナリスト5組の作品を現地からレポートする。

文=加藤真由

ハーバート・アート・ギャラリー&ミュージアム (C) Garry Jones Photography

 現代アートの世界でもっとも重要なアワードのひとつ、ターナー賞。今年のファイナリストには、アレイ・コレクティブ、ブラック・オブシディアン・サウンド・システム、クッキング・セクションズ、ジェントル/ラディカル、プロジェクト・アート・ワークスの5組のアート・コレクティブが選出。アーティストの枠を超え、アクティビスト活動が色濃く見られるのが特徴的だ。

 テート・ブリテンのディレクターであるアレックス・ファルカーソンは、「今年はターナー賞歴史のなかでも特別な年だ」と語り、史上初めて全員コレクティブとなった理由を「パンデミックでイギリスの国中に見られた一体感や連帯感を映し出しているから」だと説明する。

 さらに、5組の活動範囲を見ていると、イギリスのイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの4つの国すべてを網羅しているのがわかる。EU離脱やパンデミックを経て、いまのイギリスを取り巻く現状をファイナリストの作品が問いかけるとともに、それに対するアーティスティックなアプローチが議論を促進させることだろう。彼らは団体としてのシナジーを利用し、美術館のなかにだけにとどまってはいないのだ。

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