新進の33作家が参加。上野の森美術館で「VOCA展2019」がスタート

平面美術の領域で国際的にも通用するような将来性のある若い作家の支援を目的に、1994年より毎年開催されている美術展「VOCA展」。その26回目となる展覧会が、東京・上野の上野の森美術館で開幕した。VOAC賞を受賞した東城信之介らのコメントとともに、その様子をお届けする。

VOAC賞を受賞した東城信之介《アテネ・長野・東京ノ壁ニアルデアロウ模写》(部分)

 全国の美術館学芸員、研究者、ジャーナリストなどから推薦委員を選出し、それぞれが40歳以下の若い作家1名を推薦。そのなかから選考委員が受賞者を決めるというシステムが特徴的な「VOCA展」が、今年で26回目の開催を迎えた。

 これまでに延べ888人(組)の作家が出展し、過去の出展者には福田美蘭や小林正人奈良美智村上隆らがいるVOCA。今年は大賞となる「VOCA賞」を1978年生まれの東城信之介(推薦者:山内舞子)が受賞した。

東城信之介

 受賞対象となったのは、鋼板をグラインドさせた線条によって表現した作品《アテネ・長野・東京ノ壁ニアルデアロウ摸写》。「(VOCA展には)一生推薦されないなと思って制作活動してきた」という東城。今回の作品は、東城が19歳当時に故郷・長野で見たオリンピックの風景が原体験となっているという。オリンピックを契機に街が変わる様をまざまざと目にした東城は、2017年にアテネを訪問。そこで見た風景が、長野での光景をフラッシュバックさせたと話す。

東城信之介 アテネ・長野・東京ノ壁ニアルデアロウ模写

 「来年も東京で同じようなことが起きるタイミングで、この作品をつくれと言われたような気がしました。自分が感じてきた曖昧な景色を、視覚的にどう見せるかを考えた作品です」。選考委員長の島敦彦(金沢21世紀美術館艦長)は、東城の作品について「繰り返される国際的な大会に対する風刺的態度を、光り輝く鋼板へのエネルギッシュな殴り書きや転写によってほのめかしている」と評している。

 このほか、今回のVOCA展では「VOCA奨励賞」に石場文子​​​​​​(推薦者:千葉真智子)とチョン・ユギョン(推薦者:趙純恵)が、「佳作賞」には遠藤薫(推薦者:長谷川新)と「目」(推薦者:畑井恵)が選ばれている。また大原美術館賞は喜多村みかが受賞した。

 北朝鮮のプロパガンダイメージを用いながら、ポップなドットでその姿形を曖昧に表現するユギョンの《Let's all go to the celebration square of victory!》。今回の受賞に当たっては、「在日コリアンとして日本に生まれ、マイノリティとして生活してきました。でも僕にはアートを通して発言する権利がある。アートの力を信じています」と力強いコメントを残した。

展示風景より、右がチョン・ユギョン《Let's all go to the celebration square of victory!》

 またベトナムをベースにアジア各国の染織をリサーチしているという遠藤は、現地で集めた雑巾をつなぎ合わせ、一枚の巨大な雑巾にした作品《ウエス》を出品。「工芸を通して社会を映すような作品を今後もつくっていきたい」と語っている。

展示風景より、遠藤薫《ウエス》

 前回から推薦委員の若返りを図ったVOCA展。平面=厚さ20センチという規定のなかで繰り広げられる、多様な表現をチェックしてほしい。

展示風景より、目《アクリルガス》
展示風景より、喜多村みか《TOPOS》
授賞式の様子。前列左から東城信之介、チョン・ユギョン、遠藤薫、喜多村みか

編集部

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