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20年前の作品を横浜美術館で再展示。菅木志雄が語る「もの」とは?

横浜美術館で開催される展覧会「Meet the Collectionーアートと人と、美術館」の開幕に先立ち、ゲスト・アーティストのひとりである菅木志雄の《散境端因(さんきょうはいん)》がプレ展示中。今回の再制作について、菅木志雄に話を聞いた。

菅木志雄

 開館30週年を迎える横浜美術館で、そのコレクションが全展示室で一堂に会する展覧会「Meet the Collectionーアートと人と、美術館」が開催される。4月13日の開幕に先立ち、ゲスト・アーティストのひとり、「もの派」グループの中心メンバーである菅木志雄のインスタレーション作品《散境端因(さんきょうはいん)》がプレ展示されている。

 本作は、1999年に同館で行われた個展「菅木志雄展:スタンス」で発表された作品を再現するもの。

1999年の展示風景より、菅木志雄《散境端因》(1998)

 「20年前の作品をいま再展示してどう見えるかといえば、僕は20年前とは全然違うと思っています。たしかに見かけ上は同じですが、20年前にやった状態性や様々なディテールの問題を考えれば全部違うのです」。今回の再展示について、菅木志雄はこう語る。「『もの』が存在している状態は、いまと昔は同じように見えるが、全然違うのだと認識してほしいです」。

 本作は、米松の丸太とアルミニウムで構成されたふたつのユニットから成る、全長約50メートルの巨大なインスタレーション。美術館のエントランスを挟むように展示されている。

2019年の展示風景より、菅木志雄《散境端因》(1998) 撮影=白井晴幸

 「作品自体は完成ではなくつねに途中で、自然環境も空間性もすべてが途中の段階にあるのです」。

 また、「もの」の状態の変化だけではなく、「もの」とその「背景」や、それを展示する「空間」との相互性についても考えてほしいという。「これらの丸太は最初に切り出したときに、その背景に山や林が隠れていました。ところが20年も経ったいま、そのような背景は消えています。その代わりに美術館の空間などが背景として存在している。『もの』というのは、背景によってそのリアリティーが全然違います。自然の中にあったのと、この美術館にあるのとでは、同じように見えてもやはり違うのです」。

2019年の展示風景より、菅木志雄《散境端因》(1998) 撮影=白井晴幸

 「美術館に持ってきて20年も経てば、作品はこの空間と非常に密接に関係しています。だから背景としてあった自然性がすべて消えて、人工の空間の中での人工性とくっついています。その人工性の中では、これを通して自然を見ることができるのです。一番最初は、自然を通してこれを見たけど、今度はこれを通して自然を見られる、そういう違いがあります」。

 なお本作を含む横浜美術館の企画展「Meet the Collectionーアートと人と、美術館」では、菅のほかに束芋、淺井裕介、今津景らがゲスト・アーティストとして参加する。

編集部

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