今年、開館30周年を迎える横浜美術館。そのコレクションを、全展示室を使って紹介する大規模な展覧会「横浜美術館開館30周年記念Meet the Collection ―アートと人と、美術館」が開催される。
本展では「LIFE:生命のいとなみ」「WORLD:世界のかたち」の2部構成で、1万2000点を超えるコレクションから300点あまりを紹介。また、ゲストアーティストとして横浜美術館にゆかりのある束芋、淺井裕介、菅木志雄、そして同館では初となる今津景の作品も展示され、コレクションに新たな視点を取り込む。
第1部「LIFE:生命のいとなみ」では、「情念」を主題として人の心の揺れ動きを描いた浮世絵や日本画とともに束芋の作品を紹介。「自然」や「生命」をテーマとする作品群には、空間に増殖する淺井裕介の描画が接続される。
そのほかにも、コレクションからは「まなざしの交差」と題してマン・レイによるオブジェや、ポール・セザンヌ、奈良美智の絵画を紹介。歴史的な出来事と場所・時間の関係について考える「あのとき、ここで」の章では、ロバート・キャパやアンリ・カルティエ=ブレッソンなど同館が所蔵する豊かな写真コレクションを見ることができる。
第2部「WORLD:世界のかたち」では、5メートルにおよぶ今津景の大作を展示。コレクションの中核をなすマックス・エルンスト、ポール・デルヴォーによるシュルレアリスム絵画などの作品群を対峙させ、美術史における「引用」「変容」「接続」について再考する。
また菅木志雄は1999年に同館の個展で発表した大規模なインスタレーションを、20年ぶりに同じ場所に展示。そして本展の最後を飾るのは、ヴァシリー・カンディンスキー、田中敦子、岩崎貴宏らによる、限られた大きさの造形の中に小宇宙的な世界を紡ぎ出した作品群だ。
平成元年に開館し、30年間で美術を通じた無数の出会いを生み出してきた横浜美術館。「コレクションとの出会いの場」としての美術館の役割と可能性を見つめ直す本展に、ぜひ足を運びたい。