
赤松正行《タレスの刻印》は、古代ギリシャの哲学者タレスが見上げた星々の軌跡を想像し、時間と観測行為そのものを可視化する。石橋友也《Self-reference Microscope》は、河川で採取された人工物を含む廃棄物で顕微鏡を自作し、その装置によって川の生態系を観察するという自己言及的な試みを提示する。
後藤朋美《Trust Thy Scars》は、治癒や再生に関する現代的な問題を、氷や土といった変容する物質を用いた芸術実践によって考察する。農業に従事する福島あつしは、新作《ぼくは夏の畑で生き物たちと野菜を奪い合う》において、自然と人間のあいだに生じる生存のダイナミクスをとらえる。

また、フロリアン・ガデンのキャンバス作品《oe》は、人間中心主義的な思想を超え、環境と私たちがいかに再び関係を結び直すことができるのかを問う“ホロビオント”の視点を提示する。
本展は、人新世における根本的な問いとしての「技術」を、科学や工学の枠組みとは異なる「生に根ざした力」としてとらえ直す試みであり、多様な世代・文化的背景をもつ作家たちが、アートを通じて文明のあり方と生命の技法を再考する場となる。
会期中には、出展作家が登壇するオープニングトーク(12月12日)と、ゲストを招いたクロージングトーク(12月27日)も開催され、作品理解を深める機会が提供される。
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