アナログで創造した驚異の宇宙・近未来の世界
宇宙やSFをモチーフにした作風で国際的に活躍し、レコードジャケットの制作を多数手がけたことで知られる長岡秀星(1936~2015)。その画業をたどる「長岡秀星回顧展 SPACE FANTASY ー透明な宇宙を求めてー」が、12月8日より東京・代官山ヒルサイドフォーラムで開催される。
秀星は1936年長崎市生まれ。1970年大阪万国博覧会で展示用イラストレーションを担当し、同年4月に渡米。約3ヶ月後にカリフォルニアの雑誌『WEST』のカバーにスペースシャトルを描き、この作品で「宇宙を描く画家」として全米が秀星の名に注目し始めた。73年にカーペンターズの『Now & Then』のレコードジャケット画を描き評判を呼び、以降アース・ウィンド・アンド・ファイアーやELO、メイズなどのミリオンセラーレコードを制作。76年には『ローリング・ストーン』誌最優秀アルバムカバー賞を、77年に国際イラストレーション展優秀賞を受賞するなど、幻想的ファンタジーの画風で一躍有名になった。
日本でも、81年に新宿伊勢丹で「長岡秀星展」を開催し、2週間で6万人を動員。また、絵物語『迷宮のアンドローラ』(集英社)を出版し、つくば万博の公式ポスターおよび政府出展パビリオン「宇宙コーナー」を担当。90年代以降は、自身のライフワークとしての長編SF小説『ANABASIS』の映画化に向けたストーリーやイメージ画像の制作などに、2015年逝去までに精力的に取り組んでいた。
秀星がアメリカに渡ってから50年の節目の年に開催される本展は、メカニズムや宇宙的なイラストレーションの原画約40点と、音楽業界に大きな影響力を与えたアルバムジャケットやポスターなどの原画約30点を展示。また、会場構成は気鋭のデザイナーおおうちおさむが担当。おおうちがつくりあげる近未来の会場デザインも注目だ。
85年に出版された『長岡秀星の世界・PARTII』で、長岡はこう語っている。「21世紀を生きていく我々の残されたテーマは、やはり宇宙だと思います。(中略)さしあたりは宇宙へ出かけていくことをテーマに、とにかく人類というものを活性化しないことには生き残れない。ですから、日本の将来においても一番役に立つのは『宇宙開発コーナー』だと手前みそで思っています」。
なお本展の開催に先立ち、秀星の魅力に迫るドキュメンタリー『長岡秀星 世界のトップアーティストが認めた日本人』は11月21日にBSフジにて放送予定。近い将来に来るであろう宇宙の時代に向けて企画された本展にあわせて、時代を超えてもつねに興奮や感動を与えてくれる秀星による近未来の世界に思いを馳せたい。