1980年代のアートシーンで頭角を現した新進の若手女性作家たち「超少女」。そのひとりとして注目された田嶋悦子の個展「田嶋悦子 花咲きぬ」が、現在石川県能登島ガラス美術館で開催中だ。
田嶋は1959年大阪市生まれ、大阪芸術大学工芸学科陶芸専攻卒業。その作品は東京国立近代美術館、茨城県陶芸美術館、富山市ガラス美術館、金沢21世紀美術館、チェゼン美術館(アメリカ)など、国内外の美術館に所蔵されている。
活動初期には、増殖する女性の身体のモチーフと植物を組み合わせた、極彩色の釉薬が施された大規模な陶のインスタレーション作品を発表。大胆で強烈な表現によって、既成の枠組みや抑圧からの解放という内なるエネルギーを発露させた。
その後90年代に入ると、陶の表面を覆っていた釉薬(ガラス質)の皮膚は無垢の鋳造ガラスへと姿を変容。ともに窯から生まれながら、光と人の視線を中心へと吸い込んで透過するガラスと、光も人の視線も表面で受け止める陶を融合させた「Cornucopia(コルヌコピア)」シリーズを手がけた。古代ギリシア・ローマ時代の「豊穣の角」を意味するこのシリーズでは、ガラスの気泡によって、水分を湛えているかのような作品のみずみずしさに着目したい。
いっぽう、 2012年に制作をスタートさせた「Flowers」シリーズは、鮮やかなレモンイエローが目を引く、花々をかたどった作品。本展では、床置きのインスタレーショ ン作品が中心となるこのシリーズに合わせて、1室すべてがレモンイエローの花園を思わせる空間となる。しっかりと大地を踏みしめる花々と、上に向かって伸びていくガラス、そしてそれを取り囲むように、アジサイの葉脈を写し取り、緑の濃淡で色づけられた陶とガラスの作品群が配置される。
90年代の「Cornucopia」から最新作「花」まで、陶とガラスを独自に解釈し、しなやかに変化し続ける田嶋の作品。ガラスの輝きと透明感がつくりだす花園のような空間で、その生命力と高揚を体感してほしい。