コレクターとしてのT.O.P
ラッパーやシンガーソングライター、俳優として様々な受賞歴を持つT.O.Pは若手コレクターとしてアジアのアートシーンでも強い存在感を示している。
T.O.Pの現代美術やデザイナーズ家具への関心は、分野を超えたアート全般への興味に深く根付いたもので、ここ数年の間に、自らいくつものアートプロジェクトを手掛けてきた。2015年にはシンガポールのアート・サイエンス・ミュージアムで開催された「Prudential Eye Zone」で共同キュレーターを務めたほか、サムスン美術館リウム(ソウル)での「ヤンヘギュ:象を撃つ 象 象を想う」では自らのコレクションの一部を貸し出している。
「理想のパートナーとので出会いは運命だと言われますが、僕は偉大なアート作品との出会いも同じだと思っています。愛し合うことが運命づけられた、生涯をともにする仲間となるのです」と語るT.O.P。
今回行われるオークションはT.O.Pが初めてゲストキュレーターを務める機会であり、タイトルはT.O.Pのインスタグラム上のハンドルネームから「#TTTOP」と名付けられている。アジアそして⻄洋の新進アーティスト、世代や文化の垣根を超えた25点を超える現代美術作品が出品され、予想落札総額は約9億香港ドル(約11億7000万円)にもおよぶ。
セールを牽引するのはバスキア
出品作品で⻄洋セクションを牽引するのはジャン=ミシェル・バスキアの《Infantry》(1983)だ。同作は前澤友作の個人コレクションからの出品となっており、前澤は「良き友⼈であり、良きコレクター仲間であるT.O.P。 彼と同じようにアートと共にある人生を送るものとして、この企画を知り、協⼒したいと思いました」とコメントを寄せている。
また⻄洋セクションにはその他に、アンディ・ウォーホル、ジョージ・コンド、ルドルフ・スティンゲル、ジグマー・ポルケといった作品に加え、ジョナス・ウッドの絵画2点や、 伝説的な写真家デビッド・ラシャペルのコレクションから、キース・ヘリングの貴重な作品群も出品される。
一方、アジアセクションでは、朴栖甫(パク・ソホ)、李禹煥(リー・ウーファン)、鄭相和(チョン・ソンファ)、ナム・ジュン・パイクら、韓国の著名作家たちが並ぶ。なかでも李禹煥は一連の《Winds》作品群を制作するなかで、特別に委託されて制作した記念碑的作品、《With Winds》(1988)と、鄭相和作品でこれまでマーケットに登場したなかでも最大サイズの《Untitled 97-3-26》(1997)が出品される。これらに加え、五木田智央、何翔字(ヘ・シャンユ)といった新進気鋭作家や、国際的評価の高い、日本、韓国、中国のアジア人作家による多彩な作品群が続く。
さらに、個人的にT.O.Pと親交のある日本人アーティストとして、今回の寄付先であるACCから過去に助成を受けた名和晃平、村上隆らが、本オークションのために制作した特別な作品も出品され、注目を集めそうだ。