台湾、香港、上海等のギャラリーが出展する本フェアだが、各ギャラリーがくに力を入れていると感じられたのが、近代以降の東アジアの文化的背景が織り込まれた、風景や書を主題とした平面作品だ。
台北を代表するギャラリーのひとつであるLiang Galleryは、陳澄波の作品3点を展示。台湾の近代美術を代表する画家とされる陳は、日本統治時代の台湾に生まれ、東京美術学校(現東京藝術大学)で洋画を学んだ。台湾人として初めて帝展に入選した画家としても知られており、台湾でも数多くの芸術運動を推進したものの、台湾の国民政府と台湾共産党との闘争である二・二八事件の渦中で銃殺された。90年代に入るまで、政府によってその画業が長らく明らかにされていなかったが、00年代以降はマーケットでも高い評価を受けるようになった。奔放なパースペクティブで描かれたこの先鋭的な風景画は、アジアにおける植民地支配や政治闘争の歴史が織り込まれている。

台北のASTAR GALLERYも、風景をモチーフとした作品を多数出展していた。台湾の山々や海の風景の色彩をコラージュのように再構築する盧俊翰、山並に心象を仮託する蘇頤涵などの作家が並ぶが、なかでも鄭崇孝の作品はプレビューの時点で完売するほどの人気だった。鄭は歴史的な山水画を研究したうえで、現代的な視覚言語にもとづきリメイクした作品を制作しており、東洋美術の文化的な厚さを現代美術の場に持ち込むことに成功しているといえる。





















