「ART FAIR ASIA FUKUOKA 2025」開幕レポート。10年続くアートフェアの舞台裏とは?

アジアをコンセプトとしたアートフェア「ART FAIR ASIA FUKUOKA 2025」が今年も3日間の会期をスタートさせた。このアートフェアが10年継続できた理由とは何か。会場の様子とともにお届けする。

文・撮影=三澤麦(ウェブ版「美術手帖」編集部)

「ART FAIR ASIA FUKUOKA 2025」会場の様子

 アジアをコンセプトとしたアートフェア「ART FAIR ASIA FUKUOKA」(AFAF)。今年10回目となる「ART FAIR ASIA FUKUOKA 2025」がマリンメッセ福岡B館にて3日間の会期をスタートさせた。

「ART FAIR ASIA FUKUOKA 2025」会場の様子

 今年も保税展示場の許可を受けて開催される同フェアでは、海外出展者が輸入税等を留保された状態で作品を展示することが可能。この制度を活用する国内外のアートフェアやギャラリーはいくつか存在するが、4年連続保税展示場制度を活用するアートフェアはAFAFのみだという。海外出展者が安心して作品を持ち込み展示できる環境を整備するためには、このような施策の継続が重要となってくる。

「ART FAIR ASIA FUKUOKA 2025」会場の様子

 同フェアには今年も100を超えるギャラリーが出展。今年は「Galleries」「Collaboration」「Partner」「AFAF Special Booth」のほか、「Masters」「First Collections」「Leading ASIA」「Feature」といった、ブースごとの多様なプレゼンテーションが光る。さらに、大型インスタレーションを展示する「Infinity」や、ライブパフォーマンスを行う「Moment」といった、新たな試みも見どころと言えるだろう。

 国内外の83ギャラリーが集う「Galleries」には、小山登美夫ギャラリーみぞえ画廊ミヅマアートギャラリー√K Contemporary東京画廊+BTAPなどといった東京を拠点とするギャラリーが大部分を占めており、そのほか福岡をはじめ、京都、名古屋を拠点とするギャラリーが出展している。海外ギャラリーは全体のうち9ギャラリーとなった。

ギャラリーモリタ+画廊香月(福岡 / 東京)。ギャラリーモリタのオーナー・森田俊一郎はAFAF創設者のひとりであり、第1回より出展を続けている
みぞえ画廊(東京 / 福岡)がフォーカスするのは、八頭司昂、柴田七美、豊福知徳、小松孝英、野見山暁治、弓手研平ら
小山登美夫ギャラリー(東京)は「風景画」をテーマに、サム・フォールズ、シュシ・スライマン、古橋義朗、風能奈々、中園孔二​、須藤由希子、名知聡子らをピックアップ
JILL D’ART GALLERY(名古屋)は、同ギャラリーが今年度とくに注目しているという野村仁衣那、新埜康平の二人展を実施
Gallery CONTAINER(岩田屋本店、福岡)は彫刻家・牧野永美子による作品を紹介
sponge(福岡)は、福岡市の画家・田中千智をフューチャー。田中による壁画作品《生きている壁画》は、2025年末まで福岡市美術館にて展示されている

 企業・学校による「Collaboration」にも注目したい。福岡県によるレジデンスプログラムや九州産業大学芸術表現学科など、地域に根ざすアーティストらによる作品も各ブースにずらりと並ぶほか、一般財団法人九州美術振興財団は、戦後福岡で誕生した前衛芸術集団「九州派」を取り上げ、同団体解散後の動向に光を当てている。キュレーターには山口洋三、山本浩貴らが名を連ねる。

「Collaboration」ブースより、「持続するスピリッツ」。「九州派」は、2015年に初開催されたAFAFでも再評価の流れを受けて特集されていた。

編集部