「Kiaf SEOUL 2025」開幕レポート。不況が叫ばれるいまだからこそ、東アジアのアートの中心地を確固たるものに【4/4ページ】

 また、会場では 「Kiaf HIGHLIGHTS」の表示があるギャラリーに注目してみるものいいだろう。「Kiaf HIGHLIGHTS」は出展者が応募した新進アーティストを特集するもので、Kiaf委員会が応募作品を精査し、最終候補10名を決定している。候補作を出展しているギャラリーには「Kiaf HIGHLIGHTS」の表示が付けられており、数多のアーティストが紹介されるフェアを見るうえでの、ひとつの指標となる。

Lucie Chang Fine Artsのブース風景より、余晓(シャオ・ユウ)の作品

 加えて、会場の各所で作品を展示する特別展「Reverse Cabinet」も本フェアの見どころのひとつと言える。ソウルのイルミン美術館のチーフキュレーターでありキュレーション・プラットフォームWESS共同ディレクターのユン・ジュリと、東京のオルタナティブスペース「The 5th Floor」共同ディレクターの岩田智哉がキュレーションを担当。日韓国交正常化60周年を記念し、韓国からドン・ソンピル、ユム・ジヘ、チョン・グムヒョン、オ・カイ、日本からは竹村京、髙橋銭の作品が展示されている。

展示風景より、ユム・ジヘの作品

 破損したものを絹糸で縫い直すことで修復する竹村京は、韓国で真贋が定かではない破損した骨董品を手に入れ、本展のために修復。何が偽物で、何が本物なのか、その問いを超えて修復という行為が共通の言語として機能している。

展示風景より、竹村京の作品

 ドン・ソンピルはアニメ、マンガ、ゲームをはじめとするキャラクターの図式化された表情や、それらを愛好する人々の蒐集行為に着目するアーティストだ。会場ではフィギュアの入ったケースや、象徴的な表情を埋め込まれた人物の顔の立体、モニターとソファなどを組み合わせたインスタレーションを展開した。

展示風景より、ドン・ソンピルの作品

 オ・カイは、都市を歩く中でスマートフォンで撮影した風景の断片を集め、三次元の複合的な彫刻として再構築する「Half Sticky」シリーズを展示。眼の前を通り過ぎていく無数のイメージを具現化させている。

展示風景より、オ・カイの作品

 不況が頻繁に囁かれるようになった現代のアートマーケットにおいて、それを追い風とするためにさらなる存在感を示そうとしているKiaf SEOUL 2025。東アジアのアートマーケットにおいて、確固たる地位を得ようとするこの都市の現在形が垣間見えるフェアとなっている。