「Kiaf SEOUL 2025」開幕レポート。不況が叫ばれるいまだからこそ、東アジアのアートの中心地を確固たるものに【2/4ページ】

 会場で印象に残ったブースをいくつか紹介していきたい。80年代より世界の現代美術を韓国国内に紹介してきた、ソウルと釜山に拠点を持つクジェギャラリー(KUKJE GALLERY)は、国際的に高い評価を受けるウーゴ・ロンディノーネを個展形式で紹介。人工的な着色の作品群によって表現された、山や月を想起させる風景はブース内を静謐な空間として成立させていた。

クジェギャラリーのブース風景より、ウーゴ・ロンディノーネの作品

 米・ヒューストンのアート・オブ・ザ・ワールド・ギャラリー(Art of the World Gallery)も著名アーティストの作品を多く持ち込んだ。なかでも、あらゆる対象をふくよかに描くことで知られる、コロンビアを代表する芸術家、フェルナンド・ボテロの絵画は、多くの人が足を止めて見ていた。

アート・オブ・ザ・ワールド・ギャラリーのブース風景より、フェルナンド・ボテロの作品

 ソウルの東山房(DongSangBang Gallery)は現代美術から李氏朝鮮時代の美術までを広く紹介するギャラリーだ。今回のフェアでは、沈師正、鄭敾、柳德章といった李氏朝鮮後期に活躍した文人画家たちの山水画や花鳥図を展示しており、近現代美術を中心とした本フェアでも異彩を放つとともに、朝鮮美術のアイデンティティを問いかけているようでもあった。

東山房のブース風景より

 韓国の現代美術の国際的な評価を牽引してきた単色画(ダンセッファ)を数多く紹介してきたソウルのウェルサイドギャラリー(WELLSIDE GALLERY)。会場では、単色画の代表的作家のひとりであり、2023年に世を去ったパク・ソボが最晩年に描いた鮮やかな色彩の作品が目を引いた。ほかにも李禹煥(リ・ウファン)、ユン・ヒョングン、ソン・サンキといった、20世紀の韓国美術において重要な役割を果たした作家の作品が並ぶ。

ウェルサイドギャラリーのブース風景より、右がパク・ソボの作品