カンボジアのカヴィッチ・ニアンはある日、自身の両親がポル・ポト率いるクメール・ルージュにより強制的に結婚させられたことを知ったショックから映像作品を制作。当時のことを教育のレベルでは知ることが少ないと語るニアンは、いまなおカンボジア社会に影を落とすかつての独裁政権の影響を、静かな物語として紡ぐ《THREE WHEELS》(2015)をつくることで歴史を省みた。
いまなおロシアとの戦闘が続くウクライナのヴェラ・ブランシュは日本で制作した作品《A Moment of Peace》(2023)を展示。ロシア占領軍によって拉致された100万人のウクライナの子供たちや、両親や親戚と引き離された子供たちに思いを馳せながら、子供たちをはじめとした日本の平和な風景を撮影した。
各国の現在の状況を映像として接続しようとする、アーティストそれぞれの多様な視点が感じられる作品が揃っている。今年の「art stage OSAKA」は会場で腰を据えつつ、それぞれの作品をじっくりと見て、各国の文化や歴史に思いを馳せるといいだろう。
なお、同一の入場券で同一会場で開催されている、隈研吾やコシノジュンコ、野原邦彦などが参加するアートフェア「OSAKA ART Showcase Leading To 2025」(主催:大阪府・大阪市・大阪文化事業実行委員会)も開催されている。