SBIアートオークションの第44回モダン&コンテンポラリーセールが、東京・代官山のヒルサイドテラスにて4月23、24日の2日間にわたって開催された。そのハイライトをお届けする。
1日目は、若手作家や国外で人気が高い草間彌生や奈良美智のエディション作品、「もの派」の作家などが中心となった。
セール冒頭では、愛☆まどんなのユニーク作品3点が好調なセールを記録。とくにF50キャンバスの作品《のれん》(2013)は、予想落札価格50〜80万円に対し、180万円で落札。ほかの小サイズの作品2点も予想落札価格15〜25万円に対し、いずれも100万円を超す落札額を記録した。愛☆まどんなの作品はこれまでもオークションに出品されることはあったが、今回は人気の高まりを感じさせる結果となった。
海外を中心に作品を発表し、国外のコレクターから人気が高い下田ひかりの作品も出品された。ステッカー、樹脂、油彩を組み合わせたF10サイズの作品《メメント・モリ「ど」》(2016)は、予想落札価格30〜50万円に対して180万円で落札。
国内のアートオークションではメディアとしての伝統的な価値や展示・保管のしやすさ等の理由から、立体作品より絵画作品に人気が集まる傾向があるが、今回は立体作品《ぞう》(2011)の競り合いに会場が盛り上がった。この作品は滋賀・信楽を拠点に陶、木、鉄など様々な素材による器、オブジェを制作している大谷工作室によるもの。45×72×57cmと相応の大きさのある陶製の作品だが、予想落札価格40〜70万円に対して300万円まで競り上がり、インパクトを残した。
事前の問い合わせも多く、1日目のハイライトだったのが草間彌生の7点組の木版画《七色の富士 (Kusama 394-400)》だ。予想落札価格は2000〜3000万円と高額に設定。国内外からの入札が行われ、3000万円で落札と高額の結果を残した。
2日目は、奈良美智が1998年に制作したオリジナルのドローイング作品《Lollipop(Nara D-1998-010)》が今回のセールの最高落札額となる6700万円で落札。1500万〜2500万円の予想落札価格を大幅に上回った。
セール開催前から注目を集めていた、20世紀前半に活躍したフィリピンの国民的画家であるフェルナンド・アモルソロ(1892〜1972)の作品。アモルソロの絵は2019年のサザビーズ香港で、予想落札価格20〜30万香港ドルに対して190万香港ドル(約2630万円)で落札されており、アジアの近代美術が再評価される例のひとつとなっている。今回のSBIアートオークションに出品されたのは、前所有者が作家より直接入手したという油彩画《Lady with Banga》(1930頃)。予想落札価格1000〜2000万円に対して3000万円で落札された。
また、ロッカクアヤコの大判の絵画作品《Untitled》(2014)は、最高予想落札価格1200万〜1800万円に対し3000万円で落札された。
すでに大きな話題となっていた、アンディ・ウォーホルが1985年に発表した広告シリーズのうちの1作、シャネルの香水「No.5」をモチーフにした《CHANEL, from Ads(F. & S. IIB.354)》(1985)は、予想落札価格1500万〜2500万円に対し、2900万円で落札。同作は190エディションだが、エディションそれぞれで配色がまったく異なる1点物だ。また、ウォーホルによるもうひとつのユニーク作品《FLOWERS》(1965頃)は予想落札価格1500万〜2500万円に対し、2600万円で落札された。
ここ数回のSBIオークションで高額な数字を記録しているKYNE。ステッカーのように女性のバストアップのシルエットを型どったキャンバスに描かれた作品《Untitled》(2019)は、最高予想落札価格1400万円の約2倍となる2700万円で落札。また、MADSAKIの《Rue de Faubourg Poissonniere(3)》(2017)は、激しい入札合戦の末に最高予想落札価格の2倍以上となる1700万円で販売された。
これらの高額な作品だけでなく、今回のセールでは複数の作品が最高予想落札価格の3倍以上で落札された。山口歴の立体作品《SPLITTING HORIZON NO.10》(2018)は、最高予想落札価格350万円の3倍以上となる1150万円で落札。グラフィティ・アーティストであるミスター・ドゥードゥルのハローキティをモチーフにした作品《Kitty Pink #4》(2019)は400万円台まで競り上がったとき、会場で1000万円のビッドが入り、最終的には最高予想落札価格の約3倍となる1150万円で競り落とされた。
今回、予想落札価格をもっとも大きく超えて落札されたのが、東京を中心にニューヨークやロサンゼルス、パリなどで活動しているアーティスト・LYの作品だ。《On the street》(2018)は、最高予想落札価格35万円を大幅に上回る240万円で落札。また、1.3×1.3メートルの絵画《FROM SOMEWHERE》(2017)も、最高予想落札価格の約3倍となる700万円で落札された。
そのほか、Backside works.の《The Melody of(original ver.)》(2020)とKURAYA Emiの《Date Spot》(2018)も、それぞれ800万円と500万円で落札され、ともに最高予想落札価格の5倍以上。スケートボードの廃材を使用した彫刻で知られるアーティスト・Haroshiの彫刻作品《Skate Rat》(2012)も、180万円の最高予想落札価格に対して630万円で競り落とされた。
SBIオークションに初出品のアーティストの作品にも注目したい。ともに1982年生まれで、現在多くのコレクターの支持を得ているアーティスト、平子雄一と今井麗。平子の《Memories Of My Garden/Play In The Lake》(2011)は140万円の最高予想落札価格に対して260万円で落札。今井の《Breakfast》(2014)は185万円で落札され、50万円の最高予想落札価格の3倍を超えた。
落札価格に取引手数料15パーセントを加えた本オークションの最終的な取引総額は、10億3857万750円となった。