2019年最後の開催となるSBIアートオークションの第35回モダン&コンテンポラリーセールが、11月1日と2日の2日間にわたり開催された。
オークション初日の最初を飾ったのは、李禹煥(リー・ウーファン)の作品11点をはじめ、朴栖甫(パク・ソボ)や郭仁植(カク・インシク)といった、近年、世界的に評価が高まっている韓国の「単色画」の作品。海外からの電話によるビット参加が多く見られた。
河原温《無題》(1953)は、東京国立近代美術館所蔵の連作《浴室》(1953)28点のうち数点と類似性を持つ人物が描かれた作品。河原が《浴室》の制作期間中に描いた作品である可能性が高く、日本で活動していた時期の河原を知るうえでも貴重な作品と言える。その歴史的な価値が評価され、予想落札価格の200〜400万円に対して、650万円まで価格が競り上がった。
草間彌生は、シルクスクリーンやリトグラフのエディション作品から、ユニークの作品まで、約30点が出品された。なかでも《A.PUMPKIN(Y)》(2004)は、草間を象徴するかぼちゃを題材にしたペイント作品とあって、国内外から多数のビットを集めた。最終的には予想落札価格上限の9000万円で落札。結果的に、これが2日間のオークションを通じての最高落札額となり、草間の人気の高さをあらためて印象づけた。
近代美術作品では、ルノワールの油彩画《Tête de jeune fille épluchant un fruit》(1895)が目玉となった。予想落札価格5000万〜8000万円に対し、8500万円という高額で落札された。
2日目は五木田智央、花井祐介、KYNEといった、1週間前に東京・原宿で開催された「Harajuku Auction」Vol.2でも高値を記録したアーティストの作品が出品。Harajuku Auctionでアクリルペイントが予想落札額の5倍を超える高値を記録した花井は、今回も予想落札価格15〜25万円に対し、80万円の高額をつけて落札された。KYNEのアクリルペイントも予想落札価格20〜30万円に対して、155万円で落札と相変わらずの人気を見せた。
7月に開催された前回のSBIアートオークションで予想落札価格を大幅に上回る価格で落札された加藤泉は、ドローイング2点、油彩が1点出品。とくに油彩の《作品》(2004)は、予想落札価格の上限を120万円も上回る200万円を記録した。ロッカクアヤコの作品は5点が出品。2011年と2017年のアクリルペイント2点は、予想落札額よりそれぞれ400万円以上高い、1250万円と1350万円で落札された。
また、愛☆まどんなのアクリルペイント《彼女の顔が思い出せない》(2013-14)が予想落札価格20〜30万円に対して90万円、小泉悟の木彫《はなだいろに潜む》(2011)が予想落札価格20〜30万円に対して115万円と、印象的なビットも多数あった。
また今回は、これまでのSBIアートオークションではあまり扱われてこなかった、手塚治虫『鉄腕アトム』をはじめ、マンガのイラストやアニメの原画も数点が出品された。2018年5月、フランスのアールキュリアルが主催する「Comic strips auction」で、手塚治虫の『鉄腕アトム』の原画が、予想落札価格を20万ユーロも上回る26万9400ユーロ(約3500万円)で落札されたように、日本のマンガの原画やアニメのセル画は、高騰傾向にある。今回出品された作品も、海外からのビットが多く見られ、需要の高まりを感じさせた。いっぽうで、投機目的で貴重な資料が散逸することも懸念されており、今後の世界のマーケットの動きを注視したいところだ。
落札価格に取引手数料15パーセントを加えた最終的な取引総額は9億2599万1500円となった。大いに盛り上がった前回7月のSBIアートオークションほどではないものの、草間彌生をはじめとする人気アーティストのマーケットでの評価の高さが、改めて感じられたオークションだった。