株式会社マレットジャパンによる近現代美術作品を扱うオークションが、9月27日に東京・木場で開催された。総出品数は182点。
まず、プレビューの段階から多くの注目を集めていたのが、デイヴィッド・ホックニーのプールを描いた象徴的なリトグラフ作品、《水のリトグラフ(線、2種類のライトブルーの淡彩)》(1978-80)だ。海外からの電話も含め、多数の電話入札が競り合った結果、予想落札価格の400万~500万円を350万円も上回る850万円で落札。これが今回のオークションの最高落札額となった。
オークションのハイライトとされ、カタログの表紙にも使用されていたのが、多摩美術大学で教鞭をとり、「もの派」を育てたことでも有名な斎藤義重の作品。合板とラッカー、鉄によって制作された斎藤義重《無題》(1994)は、制作過程で生み出された下絵とペイントを含めた3点セットで出品。電話入札と会場入札が活発に競りあい、予想落札価格の100万~200万円を上回る380万円で落札された。
また、具体美術協会に参加していた元永定正の《無題(びょうぶ)》(1988)は、金屏風にアクリル絵具で描画された大型作品で、プレビューでもひときわ目立っていた。落札価格は220万円(予想落札価格は150~250万円)。
人形作家の四谷シモンの《未来と過去のイヴ8》(1973)にも多くの入札があった。今回出品されていたのは、四谷の最初の個展である「未来と過去のイヴ」(1973)に出展された全12体のうちのひとつで、専用のケースに入っている。貴重な四谷の初期作品とあって、予想落札価格は300万~400万円、最終的に最高予想落札価格に近い390万円の値をつけた。
尾辻克彦の名で小説を執筆していた赤瀬川原平が、文を尾辻克彦、絵を赤瀬川原平として発表した絵本『ニナの話』の表紙となった、珍しい水彩画も出品。1987年ごろのものとされる本作は、22万円で落札となった。
今回のオークションの落札総額は1億1697万円となった。オークション全体を通しての価格の動きは堅調な印象で、著名アーティストの貴重な初期作品や、意外な作風を持つ作品が、参加者を楽しませていた。