シンワオークション株式会社による、「近代美術PartⅡオークション」「近代美術オークション」「戦後美術&コンテンポラリーアート」の3つのオークションが、9月21日に東京・銀座で一挙開催された。総出品数は356点。
この日、最高額を記録したのは、棟方志功の《二菩薩釈迦十代弟子》(1939)だった。同作は12枚組の版画作品で、予想落札価格の2500~3500万円を上回る3700万円で落札された。
葛飾北斎の《冨嶽三十六景 凱風快晴》も高額での落札となった。富士山の山肌に現れた木目の美しさや、画題の文字を囲む二重線の明瞭さから、初摺りに近い時期のものと鑑定されており、その希少性から予想落札価格は1000万~2000万円に設定。最終的には2700万円と予想落札価格を上回る価格で競り落とされた。
モーリス・ユトリロ《サノワのオーボンヌ通り(ヴァル=ドワーズ県)》(1912~14頃)も人気を集めた。ユトリロの画業のなかでも高く評価されている「白の時代」に制作され、さらにその後の「色彩の時代」の片鱗もうかがわせる本作は、ユトリロの作風の変化を感じられるとして高く評価され、2200万円の値をつけた。
今回出品された現代美術作品のなかで、もっとも高額の予想落札価格をつけたのが、奈良美智の立体作品《The Puff Marshie Mini / White》(2011)だ。予想落札価格は1000~2000万円となり、最終的には1000万円で競り落とされた。
国内のアートオークションにおいて高い人気を集めるロッカクアヤコは、アクリル絵具でダンボールに少女を描いた作品が出品。200万~300万円の予想落札価格が提示され、250万円で競り落とされた。
また、小林正人の《アーティスツ・ライフ Artist`s Life #8》(1996)は、予想落札価格が20~40万円だったが、58万円と高値で落札。小林の作品の人気を印象づけた。
日本の展覧会の歴史を語るうえでも重要な、1991年の東京国立近代美術館の展覧会「荒川修作の実験展示:見る者がつくられる場」のポスターも出品。ポスター5点が2万〜5万円の予想落札価格に対して、9万円の高値をつけた。
この日の最終的な落札総額は2億5305万5000円となった。シンワオークション株式会社の親会社である、シンワワイズホールディングス株式会社の代表取締役社長・羽佐田信治はこう語る。「近代美術が中心のシンワオークションだが、近年は現代美術作品の出品も多くなり、高額での落札も増えている」。近代美術作品の継続的な人気をうかがわせると同時に、国内の現代美術マーケットのさらなる拡大を期待したくなるオークションとなった。