京都市京セラ美術館の東山キューブで「禅とジブリ」京都展が開幕した。会期は12月6日まで。スタジオジブリと日本テレビが企画・制作する本展は、一見すると意外にも思える「禅」と「ジブリ」の関係を、空間そのものを通して体感しようとする展覧会だ。
『君たちはどう生きるか』から「あっちの世界」へ
展覧会の原点となったのは、スタジオジブリのプロデューサー・鈴木敏夫が2018年に刊行した『禅とジブリ』(淡交社)。鈴木が玄侑宗久、横田南嶺、細川晋輔という3人の禅僧と対話し、『もののけ姫』『火垂るの墓』などのジブリ作品や、宮﨑駿、高畑勲との映画制作をめぐる経験を通して、死生観や人生について語った一冊だ。
では、なぜ「禅」と「ジブリ」なのか。両者を結びつけるのは、ジブリ作品に見られる、善悪を単純に二分せず、答えを急がない姿勢だ。すべてを理解し、割り切ろうとするのではなく、ときに曖昧さを残したまま世界を受け止める。そうした態度は、物事を性急に判断することなく、ありのままに見ようとする禅の考え方とも重なっていく。その関係をもっとも象徴的に示す作品として、本展の中心に据えられているのが、宮﨑駿監督の長編映画『君たちはどう生きるか』(2023)だ。


同作では、母を亡くした主人公・眞人が、アオサギに導かれ、現実とは異なる世界へと足を踏み入れていく。本展でもこの構造をなぞるように、アオサギを起点として、第1章「あっちの世界、こっちの世界」へと来場者を誘う。
そこに広がるのは、『君たちはどう生きるか』に登場する「時の回廊」を思わせる空間だ。いくつもの扉の向こうには、それぞれ異なるジブリ作品の世界が展開されている。『千と千尋の神隠し』(2001)では湯婆婆が待ち構え、『崖の上のポニョ』(2008)ではポニョが巨大な魚の上を駆け、『ハウルの動く城』(2004)では城がダイナミックな動きを見せる。

ジブリ作品では、日常から非日常へ、あるいはこちら側から「あちら側」へと、登場人物が境界を越えていく場面が繰り返し描かれてきた。本展では、そうした様々な「あっちの世界」を、立体造形や映像、空間演出によって横断していく。
本展を担当したスタジオジブリ プロデューサー部の出野龍郎によれば、展覧会は鈴木の発案から約5年をかけて構想されたという。その中心に『君たちはどう生きるか』を選んだ理由について、出野は、ひとつの映画を深掘りすることに加え、同作が「あちら側」へ行き、再び「こちら側」へ戻ってくる構造を持つ作品であることを挙げる。そして本展そのものが、「『君たちはどう生きるか』が投げかけた問いへのひとつの応答」でもあり、来場者にとって禅とは何かを考えるきっかけになればと語っている。



































