ヴェネチア・ビエンナーレ日本館、荒川ナッシュ医「草の赤ちゃん、月の赤ちゃん」の展示詳細が明らかに。200体の赤ちゃん人形と「ケア」を問う空間へ【2/2ページ】

 館内へ進むと、荒川ナッシュが自身の双子の赤ちゃんの声をもとにサージ・チェレプニンが作曲したサウンドが空間全体に響く。1995年の日本館代表・崔在銀(チェ・ジェウン)の映像作品、イサム・ノグチの作品とそれに触発された子供たちの作品なども展示され、世代を超えた共鳴が生まれる。

 展示の締めくくりには、来館者が抱いてきた赤ちゃんのおむつを替えるという具体的な「ケア」の行為が待つ。おむつに印刷されたQRコードをスキャンすると、占星術師でライターの石井ゆかりがその赤ちゃんの誕生日に合わせて書き下ろした「オムツの詩」が届く。また赤ちゃん人形には、荒川ナッシュが自身の子供たちに伝えたい20世紀の歴史的な日付が誕生日として設定されるという。私たちは、過去とどのように向き合い、その先にある新しい命をどう祝福できるのか──来館者はケアという個⼈的な⾏為を通じて、世代を超えて受け継がれる責任と希望の問いに直⾯することとなるだろう。

 また本展で荒川ナッシュは、日本国籍を有しない作家として初めて日本館で個展を開催するという点でも注目される。「多文化的な背景を持つ作家が選出される近年の国際的な動向とも呼応しており、現在の『日本の多様性』をヴェネチアという国際舞台で提示する機会となる」と主催者は述べている。

 本展ではさらに、隣接する韓国館(代表作家:チェ・ゴウン、ノ・ヘリ、キュレーター:チェ・ビンナ)との史上初の公式連携として、互いの作品が⾏き来する仕掛けやイベントの共同開催も予定されている。

 なおヴェネチアでの実践は、荒川ナッシュ医がプロデュースし、作家・映像作家の中村佑⼦と社会学者の佐伯栄⼦とコラボレーションして制作する映像作品として2027年に東京で公開予定だという。