メトロポリタン美術館、初のVRプログラムで古代エジプトとオセアニアへ。「Dendur Decoded」と「Oceania: A New Horizon of Space and Time」公開【2/2ページ】

 いっぽうの「Oceania: A New Horizon of Space and Time」では、パプアニューギニアのクウォマ族による《儀礼の家の天井》など、儀礼や神話に結びついた15点の展示品が、太平洋諸島を想起させる屋外環境に着想を得た空間デザインと、音声・物語によって紹介。展示空間では、没入型オリジナル音声や太平洋諸島の語り継がれる物語、アーカイブ画像、360度動画、高解像度3Dモデルなど、展示品に付随する解説コンテンツが提供される。

「Oceania: A New Horizon of Space and Time」より
「Oceania: A New Horizon of Space and Time」より

 両プロジェクトは、没入型アートと文化体験のプラットフォーム「アトピア(Atopia)」との共同開発によるもの。高精細な3Dスキャンはメトロポリタン美術館のイメージングチームが制作し、キュレーター陣が監修した物語性のある演出が組み合わされている。これにより、観客は動き・音・インタラクション・遊びの要素を通して作品と関わることができ、VRヘッドセットやウェブブラウザを通じて、どこからでもアクセス可能だ。

 メトロポリタン美術館の館長兼CEOであるマックス・ホラインは次のように語る。「当館のコレクションは年間数百万人に親しまれている。バーチャル空間の可能性を探ることで、地理的な制約を越えた文化体験を提供できる。今回のVR体験は、魅力的なストーリーテリングと学芸的知見を融合させ、当館の作品群に参加型で没入する新しい方法を提示するものだ」。

 また、アトピアの創設者アナベル・ヴァカノはこう述べている。「これまで没入型展示は特注かつ高コストだった。アトピアは、規模を問わず世界中の美術館が自らのコレクションをオンラインで体験できるようにするためのプラットフォーム。メトロポリタン美術館と共にその仕組みを設計できたことは光栄だ」。

 デジタル技術がもたらす新たなアート体験のかたちを、メトロポリタン美術館がまたひとつ切り拓いた。

デジタル技術がもたらす新たなアート体験のかたちを、メトロポリタン美術館がまたひとつ切り拓いた。