2018年にルーヴル美術館にあるガラスのピラミッドにて巨大彫刻を発表し、話題を呼んだ彫刻家・名和晃平。その高さ25メートルの新作彫刻《Ether(Equality)》が、6月28日にパリ・セーヌ川に浮かぶセガン島に公開される。
同作は、「égalité(平等)」をテーマに、オードセーヌ県が2019年に主催した国際コンペティションで選出されたもの。フランスのデジタルアートを牽引するプラットフォーム「DANAE.IO」とタッグを組んだこの作品は、世界中から集まった35作品のなかから選ばれ、コロナ禍における厳しい計画と制作を乗り越え、いよいよ完成を迎える。
設置場所であるセガン島は、ノートルダム大聖堂やエッフェル塔が建ち並び、世界遺産にも指定された一角のやや下流に浮かぶ小さな島。18世紀末からセーヌ地方の工業の中心地として栄え、フランスの近代化と工業発展の象徴としても知られている。
2009年、同地を文化の中心地として再興すべく、ジャン・ヌーヴェルをディレクターとした再開発計画が始動。アートセンターやオフィス・商業施設を含む大規模なプロジェクトが計画され、17年には日本を代表する建築家のひとりである坂茂の設計により、音楽総合施設「ラ・セーヌ・ミュジカル」が完成している。
高さ25メートルを誇る名和の作品は、その数ある彫刻作品のなかでも最大級のもの。薄いシルバーピンクに輝くステンレスの彫刻は十二角形をベースとした多面体で構成されており、地面に落下する水滴のシルエットを上下反転させながらランダムに積み重ねることでかたちづくられている。
連続する様々なかたちの雫は視覚的なリズムをつくりだし、背後に建つラ・セーヌ・ミュジカルの多面球ドームと呼応しながら、あらゆる方角へと響きわたっていく。セーヌの川面に立った一筋の水しぶきが伸び上がるように、同作はセガン島を導く新たな道標となるだろう。