平面、彫刻、パフォーマンスなど領域を横断しながら様々な作品を発表してきた名和晃平。そんな名和と振付家ダミアン・ジャレによるパフォーマンス作品《VESSEL》《Mist》《Planet [wanderer]》の書籍刊行を記念し、名和晃平の個展「Fountain」が銀座 蔦屋書店店内中央のイベントスペースGINZA ATRIUMで開幕した。
本展では、ジャレとのパフォーマンス作品をモチーフとした平面作品のほか、新作彫刻《Fountain》や活動の最初期からのドローイングをシルクスクリーンによる版画シリーズにした「Esquisse」など、初公開の作品を含む約30点の作品が展示されている。
会場の中心的なスペースに展示された《Fountain》は、森の生命の循環をテーマにした彫刻。中心から泉が螺旋を描いて湧き出て、様々な生命が土から生まれ、姿を変えてふたたび土へと還る過程をイメージしている。
同作の後方の壁面に飾られる「Esquisse」シリーズは、名和が京都市立芸術大学大学院に在籍していた2000年頃に描かれた同名のドローイングのなかから、9点をシルクスクリーンの版画として甦らせたもの。活動の最初期の作品をもとにしたこのシリーズについて名和は、「いま振り返ってみると、現象的にものやかたちを生み出したり、素材に委ねて造形するという点は共通している」と語る。
《Fountain》の反対側には、昭和初期から日本の小学校に数多く設置されてきた「二宮金次郎像」をモチーフとした「Velvet–Kinjiro」シリーズが出現。背の順に並べられたこのシリーズでは、オブジェの表面を部分的に膨らせ、全体を真っ黒なベルベット状に仕上げている。本を読みながら歩いている金次郎の像をモチーフにした作品は、銀座 蔦屋書店店内に並べられた多数の書籍にも呼応している。
そのほか、オリジナルのプロッターマシンにボールペンを取り付け、ドローイングの画像データをもとに描かれた「Plotter」シリーズや、ジャレとのパフォーマンス作品の世界観を表現した仮想の3D空間を“撮影”し、コンピュータ制御によるドリルミルでアルミ板を刻印してつくられた写真彫刻の「Orbit」シリーズも紹介されている。
また、今回刊行された作品集『ダミアン・ジャレ | 名和晃平 VESSEL / Mist / Planet [wanderer]』では、三部作にわたるパフォーマンスの様子を大判ページにて収録しながら、ジャレ、名和のインタビュー、三作品それぞれの作品評なども充実している。本展開催をあわせて、新作マルチプル作品の付いた限定特装版作品集の販売も行われる。