20世紀を代表する芸術家のひとりであり、彫刻をはじめ、舞台芸術や家具、ランドスケープデザインに至るまで様々な分野で作品を手がけたイサム・ノグチ(1904〜1988)。その展覧会「イサム・ノグチ 発見の道」が、東京都美術館で開催される。会期は4月24日~8月29日。
本展タイトルは晩年の作品である《発見の道》から取られたもので、イサム・ノグチが晩年の独自の石彫に至る道程を、大型作品を含めた約90件の作品によってたどるものだ。会場は「彫刻の宇宙」「かろみの世界」「石の庭」の3章構成。担当学芸員の東京都美術館・中原淳行は、本展について「ノグチの彫刻家のエッセンスを濃縮したもの」だと語る。「純粋な回顧展ではなく、作品点数も絞られている。彫刻家としての精髄を追える構成にしたい」。
「彫刻の宇宙」では、1940年代から最晩年の80年代の様々な作品を展示。なかでも注目したいのは、ノグチが30年以上にわたり取り組み続けた「ライフワーク」とも言える和紙を用いた光の彫刻「あかり」を用いた大規模インスタレーション。本展では、この「あかり」を大小150灯用いたインスタレーションを冒頭の展示室の中心に据え、周囲に各年代の作品を配置。500平米の回遊式の会場を構成する。
続く「かろみの世界」でキーワードとなるのは、ノグチの父の故郷である日本の文化の諸相が見せる「軽さ」だという。ノグチは晩年にいたるまで、この「軽さ」を自らの作品に取り込むことに情熱を傾けた。本章では、切り紙や折り紙からインスピレーションを受けて制作された金属板の彫刻や、真紅の遊具彫刻《プレイスカルプチュア》(1965-80頃/2021)など、ノグチの「かろみの世界」に注目する。またここではスタンド型とペンダント型の「あかり」20灯も紹介される。
終章となる「石の庭」は、これまでにない試みとなる。ノグチはニューヨークと香川県高松市牟礼町の2ヶ所にアトリエを構え、制作に取り組んでいた。現在、その2拠点にはイサム・ノグチ庭園美術館が存在するが、本展ではこの牟礼に残された最晩年の複数の彫刻を大規模に展示。また彫刻の下には牟礼の砂利が敷かれる予定だという。中原が「ノグチの到達点」と語る牟礼の空間を美術館で体感できる貴重な機会となりそうだ。