今年5月、惜しまれつつこの世を去ったアーティスト・クリスト。その生前最後となった大プロジェクト《ウォーキング・オン・ウォーター》を記録したドキュメンタリー映画『クリスト ウォーキング・オン・ウォーター』 が、12月19日より渋谷のユーロスペースで劇場公開される。
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クリストは1935年ブルガリア生まれ。2009年に亡くなった妻ジャンヌ=クロードとともに、布で建造物を包んだり、布をつかった独自の構造物を景観のなかに展開する大規模な作品を数多く発表。見慣れた都市や郊外の空間を一変させるプロジェクトは、多くの人々に驚きと感動を与えてきた。そのオブジェやドローイング作品は、ニューヨーク近代美術館をはじめ、ホイットニー美術館、テート、ポンピドゥーセンターなど世界中の美術館に収蔵されている。
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本作『クリスト ウォーキング・オン・ウォーター』は、16年にアルプスの麓にあるイタリアのイゼオ湖で実現したクリストのプロジェクト《フローティング・ピアーズ(浮かぶ桟橋)》を記録したドキュメンタリー。《フローティング・ピアーズ(浮かぶ桟橋)》は湖上に敷かれた巨大な布の上を人々が歩くという巨大プロジェクトで、1970年にジャンヌ=クロードとともに発想した作品だった。
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映画では、その発表から完成までに密着。クリストの情熱や彼を支えるチームの奮闘ぶりから、行政との折衝の様子、市民の熱狂、そして予期せぬトラブルなど、大規模プロジェクトが実現されるプロセスをつぶさにとらえている。クリストが生前に実現した最後の大プロジェクト。その貴重な記録を目撃したい。
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