今年5月に逝去したクリストが、2018年、ロンドンのハイドパーク内にあるサーペンタイン・レイクに、7506個のドラム缶を積み上げたパブリック・アート作品《The London Mastaba》を発表し、大きな話題を集めた。7月8日より、ハイドパークを訪れる人は、この作品をスマートフォンで再現することができる。
「The London Mastaba AR(Hyde Park)」と題されるこのプロジェクトは、バーチャル空間でアートを楽しむプラットフォームを制作するAcute Artによって開発されたもの。Acute Artのアプリを通じ、サーペンタイン・レイクに本作のバーチャル・バーションをインストールすることができる。
クリストは18年、ハイドパーク内のサーペンタイン・ギャラリーで回顧展「Christo and Jeanne-Claude:Barrels and The Mastaba 1958–2018」を開催。同展にあわせて、水上に浮かぶ期間限定の彫刻作品《The London Mastaba》を発表した。本作は、クリストの生涯で実現した最後のパブリック・アート作品だ。
サーペンタイン・ギャラリーのCEOベッティーナ・コレックとアーティスティック・ディレクター、ハンス・ウルリッヒ・オブリストは、今回のARプロジェクトについてこうコメントしている。「クリストとジャンヌ=クロードの天才性は、その作品に含まれる刹那さや、各プロジェクトが生みだした消えない記憶にある。このプロジェクトを彼らの超俗的なヴィジョンの永久に続くバーチャル・バージョンとして発表することは光栄だ」。
このサイトスペシフィック・プロジェクトに加え、Acute Artは自宅でもクリストとジャンヌ=クロードの作品を鑑賞できるARプロジェクト「The London Mastaba AR」を開発している。
同社のアーティスティック・ディレクター、ダニエル・ビルンバウムは、「新しい没入型メディアを民主化するのは、クリストとジャンヌ=クロードのユニークで芸術的なヴィジョンを世界中の幅広く多様な鑑賞者にもたらすだろう」とし、実際にハイドパークに行かずとも、作品をARで再現することにより、世界中の鑑賞者がこのプロジェクトにアクセスできることを目指している。