文化庁による「文化芸術収益力強化事業」の一環として、誰もがアクセスできるバリアフリー型の動画配信プラットホーム「THEATRE for ALL」が、動画配信コンテンツ募集をスタートさせた。
新型コロナウイルスの感染拡大により、パフォーミングアーツは劇場での上演を従来の規模や方法で発表することが難しい状態が続いたいっぽう、オンライン配信ならではの新しい映像作品や芸術鑑賞体験が生まれた。
こうした背景の下で、国内外でのイベント企画・運営を行う制作会社「precog」が、パフォーミングアーツや映画、メディア芸術を対象にした動画配信プラットホーム「THEATRE for ALL」を始動。新型コロナウイルスの影響で外出困難となった人々や、障害や疾患、育児、介護などを理由に劇場や展示鑑賞が困難な人々などに向けるオンライン上のアートセンターの実現を目指す。
視覚、聴覚、知的、発達障害者や子ども、母語が日本語以外の人々などを対象とした「バリアフリー」対応と、作品解説や作品の理解を深めるための双方向型のレクチャー/ワークショップなどを行う「eラーニング」プログラムが、同プラットホームの大きな特徴だ。
今回の動画配信コンテンツ募集は、このふたつの特徴を軸に展開。応募条件は、バリアフリーもしくはその両方に取り組むことで、対象分野には、ダンス、日本舞踊、バレエ、ミュージカル、人形劇、大衆演劇、落語、歌舞伎などのパフォーミングアーツや映画、メディア・アートが含まれている。
バリアフリーの対応例としては、聴覚障害者用日本語・英語、かんたんにほんご、英語やその他の言語などの字幕や、様々な言語の視覚障害者用音声ガイド、日本語手話通訳、国際手話通訳、そしてそのほかインクルーシブな視点での情報保障などが挙げられる。
いっぽう、作家紹介や作品紹介、背景紹介などの事前解説映像や、対話型ワークショップ、グラフィックレコーディングワークショップなどの双方向型ワークショップが、eラーニングコンテンツの例だ。
対象となる映像コンテンツは3種類。名作、名画、名舞台などの映像(公募1)と、演出や創作プロセスにおいて、インクルーシブな視点を持って新たに制作する作品(公募2)、そしてアーティストや作品の制作風景、国内外の劇場やフェスティバルの取組などを追う新規ドキュメンタリー番組(公募3)。いずれも応募締切は11月4日。公募1のみは、第2次募集を11月20日まで行う。1作品につき最大1200万円相当の制作予算も与えられるという。
また、募集した映像コンテンツは2021年初頭に一般公開を予定している。多様な人たちが多彩な芸術にアクセスでき、より多くの人々が文化的な生活を送れる社会の実現を目指す「THEATRE for ALL」。そのローンチを待ちたい。