東日本大震災の発生から9年が経過した2020年3月11日、「Don't Follow the Wind」(以下、DFW)のウェブサイトがアップデートされた。
DFWは、2015年3月11日より東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う帰還困難区域内で行われている国際展で、立案者はChim↑Pom。参加作家はChim↑Pomのほか、艾未未(アイ・ウェイウェイ)、グランギニョル未来(椹木野衣、飴屋法水、赤城修司、山川冬樹)、ニコラス・ハーシュ、ホルヘ・オテロ=パイロス、小泉明郎、エヴァ&フランコ・マッテス、宮永愛子、アーメット・ユーグ、トレヴァー・パグレン、タリン・サイモン、竹川宣彰、竹内公太といった国内外のアーティストで、同区域内にある民家を会場に、いまも作品を展示し続けている(帰還困難区域が解除されないかぎり展覧会は見ることができない)。
DFWのウェブサイトは真っ白な画面に音声だけが流れるもので、これまでは15年以来、展覧会を紹介する音声が繰り返し流されてきた。
しかし今年、このサイトに2020年版の音声が掲載。音声は、「震災から9年が経ちました。2020年3月、ここへの立ち入り制限が解除されました。しかしここはいまでも帰還困難区域です」という地元住民と思われる男性の声から始まる。
これまで5会場で展示が展開されていたDFW。音声を聞いていくと、そこからは声の男性が会場のひとつである双葉町の民家の持ち主であったこと、そしてその家が解体されたこと、それに付随し展示作品のひとつがなくなったことが告げられる。
政府は、原発事故の影響で唯一全町避難が続く福島県双葉町の「帰還困難区域」の一部の避難指示を3月4日に解除した。しかし男性は「いつでも来ることができるようになりましたが、住むことはできません」「私がここに戻ることはないでしょう」と訥々と語る。
震災から5年が経ついまも、来場者がいないままのDFW。まずはウェブサイトを訪れてみてほしい。