夭折の天才として、近年ふたたび注目を集めるジャン=ミシェル・バスキア(1960〜1988)。その日本初回顧展であり、巡回展ではないオリジナルの展覧会「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」が、東京・六本木の森アーツセンターギャラリーで9月21日にスタートする。5月27日、開催に先立ち都内で記者発表が行われた。
本展を主催するフジテレビジョン・イベント事業局長の宇津井隆は「展覧会に向けて本格的に動き始めたのは約5年前。バスキア研究の世界的権威であるディーター・ブッフハートの協力を得た本展は、先ごろパリのフォンダシオン ルイ・ヴィトンで行われたバスキア展のボリュームに匹敵するものです」と語る。今年4月の発表時には80点の出品が予告されていたが、その時点から大幅に出品数を増やし、約130点の出品が決定。絵画やドローイングに加え、立体作品、映像作品も展示される。
世界でも珍しく、日本の公立美術館はバスキアの作品を多く所蔵している。それらが多数集まる本展を「非常に貴重な機会になる」と話すのは、神戸大学教授・美術史家の宮下規久朗だ。宮下は、1970年代、「SAMO©」の名でストリートにグラフィティを残した後、文字と絵からなる作品スタイルを確立したバスキアの作品に見られる差別問題、アフリカ彫刻の影響など、黒人ならではのテーマ性を指摘する。
「バスキアの作品からは、愛聴してたジャズや、訪れた日本の影響なども見ることができます。また、(株式会社 ZOZO 代表取締役社長の前澤友作が2017年に123億円で落札した)《Untitled》は、はアフリカの仮面を意識していたのではないかと言われています」と語り、バスキア「天性のカラリスト」と称して、その絶妙な色彩感覚を強調する。
記者会見には、音声ガイドのナレーターを務める吉岡里帆も登場。月に1〜2度は美術館を訪れ美術鑑賞を楽しむという吉岡は、「バスキアの圧倒的な自由さに憧れますし、バスキアの作品を見るとワクワクしてエネルギーが満ち溢れるような気持ちになります。音声ガイドでは、バスキアの内面的な魅力や作品のエネルギーが伝わるように丁寧に声を入れたいです。私も展覧会開催を楽しみに待っているひとりです」と期待を述べた。