20世紀においてもっとも重要なアメリカのアーティストのひとり、ジャン=ミシェル・バスキア(1960〜88)。絵画とテキストを織り交ぜながら、当時の世相を反映する作品を数多く残したこの伝説のアーティストに迫るドキュメンタリー映画がこの冬、日本で公開されることとなった。
タイトルは『BOOM FOR REAL:THE LATE TEENAGE YEARS OF JEAN-MICHEL BASQUIAT』(原題、邦題は未定)。本作は、1978年〜81年というバスキアの初期の活動に焦点を当て、その生き様を当時のニューヨークの街の様子とともに伝えるものだ。
経済が破綻し、荒れ果てていた当時のニューヨーク。この街にうごめいていたヒップホップやパンクロック、人種問題など、あらゆる事象を飲み込み、バスキアはアーティストとしてのキャリアを重ねていった。
本作では、当時バスキアと暮らしていたアレクシス・アドラーをはじめ、バスキアとともにグラフィティ・ユニット「SAMO」を結成していたアル・ディアス、バスキアが結成したバンド「Gray」のメンバーだったマイケル・ホフマンなど、バスキアと親交のあった人々が多数登場。彼女たちの証言を織り交ぜながら、バスキアをとらえた当時の貴重な映像の数々を見ることができる。
監督は『ユー・アー・ノット・アイ』(1981)や『スリープウォーク』(1986)、『豚が飛ぶとき』(1993)などを手がけたサラ・ドライバー。「この映画では彼の神秘的な部分を避けて、バスキアの人間性を伝えています」とコメントするとおり、本作は伝説的とも言えるバスキアを、立体的な存在として伝えてくれるだろう。