現存女性アーティストでは過去最高額。ジェニー・サビルの《Propped》が約14億円で落札

10月5日、イギリス出身の女性アーティスト、ジェニー・サビルの油彩画《Propped》が、現存女性アーティストの過去最高額である950万ポンド(約14億円)で落札された。大きな女性の肉体をモチーフとしたサビルの記録は、女性作家に対する再評価の機運が高まっていることを反映しているという。

ジェニー・サビル Propped © Sotheby’s

 10月5日のサザビーズは、“バンクシー事件”に話題が集中したものの、もうひとつ注目すべきポイントがあった。イギリス出身の女性アーティスト、ジェニー・サビルの油彩画《Propped》(1992)が、950万ポンド(約14億円)で落札されたのだ。この数字は、現存女性アーティストの過去最高額となる。

 1970年にイギリス・ケンブリッジで生まれたサビルは、88年から92年までグラスゴー美術学校に通い、91年にアメリカのシンシナティ大学に半年留学。そこで、サビルは肉体の欠陥に魅了され、とくに主流の美的感覚から外れた身体をモチーフにして制作活動を行っていた。

 サビルは、「大きな女性をたくさん見れるショッピングモールに興味があった。ショートパンツとTシャツを着ている大きな白い肉体。それがよかったと思ったのは、彼女たちは私の好きな身体的特徴を持っているからだ」と語っている。今回落札された作品も、身体の比率が極めてアンバランスな女性の姿が描かれた肖像画だ。

 ロンドンを拠点とするアートアドバイザー、ナジー・ヴァシュセフは、「サビルの記録は女性作家に対する再評価の機運が高まっていることを反映している。女性アーティストは、美術館、ギャラリー、アートフェア、オークションハウスなど、全方位的に露出の機会が増えている。それは間違いなく重要な時代の流れだ」とコメントしている。

 いっぽう、11月15日のクリスティーズ・ニューヨークに登場予定のデイヴィッド・ホックニーの《芸術家の肖像画》は、推定価格が現存アーティストでは過去最高の8000万ドル(約90億円)であり、《Propped》の6倍以上。アートワールドにおいて、女性作家に対する評価の公平性はいまだ不十分だと言えるだろう。

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