ペギー・グッゲンハイムは1889年に裕福な家系に生まれる。しかし父はタイタニック号にて亡くなるなど家庭の不幸が重なったほか、伝統と格式だらけの世界に馴染めない本人の奔放な性格もあり、1920年代はじめにパリに移住。そこで多くの前衛芸術家たちと知り合い、美術作品のコレクターとなる。
そんなペギーの波乱に満ちた映画『ペギー・グッゲンハイム アートに恋した大富豪』の日本公開が発表された。本作はペギー本人のインタビュー音声や、20世紀の芸術家たちの映像、そしてグッゲンハイム美術館学芸員やマリーナ・アブラモヴィッチら、ゆかりの人物たちのインタビューから構成され、ペギーの生涯に迫るというドキュメンタリー映画だ。
20年代のパリでは、ジャン・コクトーら詩人のほか、シュルレアリスムの作家たちと交流。第一次世界大戦後のパリで新たな芸術を模索するその姿勢にペギーの肌に馴染み、作家たちを支援するようになる。購入した作品はパブロ・ピカソやサルバドール・ダリ、そして当時無名だったジャクソン・ポロックらの作品だ。それらの作品の購入にはマルセル・デュシャンがアドバイスをしていた。また、シュルレアリスムの中心人物であるマックス・エルンストとはのちに夫婦となる。
ペギーはロンドンとニューヨークにギャラリーを構え、前衛芸術家たちの展覧会を行うなど支援をしたのち、第二次世界大戦後の48年にはヴェネチアのカナルグランデ沿いにパラッツォ・
ペギーの幼少期からヴェネチアで過ごした晩年までを、本人による歯に衣着せぬ明るい語り口調とともに追う本作では、恋多き女性であったペギーの視点から20世紀美術の知られざる一面も見えてくる。
2018年はペギーの生誕120周年。ペギーの残した功績をあらためて振り返るきっかけとなる映画だ。