フェルメールの絵画から生まれた物語。17世紀オランダが舞台の映画『チューリップ・フィーバー』が秋に公開

フェルメールの絵画世界に発想を得た小説を原作にした映画「チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛」が10月6日から公開される。17世紀オランダを舞台に、フェルメールが描いた作品へのオマージュが散りばめられた映画だ。

映画『チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛』より ©2017 TULIP FEVER FILMS LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

 現代イギリス文学界を代表する作家のひとりであるデボラ・モガーによりベストセラー小説『チューリップ熱』(白水社、2001)は、「フェルメールの絵画の世界を小説にしたい」という思いから生まれた。

 そんな同書を原作とした映画『チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛』が、2018年10月より公開される。監督は『ブーリン家の姉妹』のジャスティン・チャドウィック、脚本は『恋におちたシェイクスピア』でアカデミー賞を受賞したトム・ストッパード。

 作品の舞台は、スペインから独立し「黄金時代」と呼ばれた17世紀オランダ。人々は投資や収集に熱をあげ、なかでも「絵画」と「チューリップ」に大きく関心が寄せられていた。当時のチューリップは希少な品種の球根1個が邸宅1軒分に相当し、世界最古の経済バブルとして知られる「チューリップバブル」がピークを迎えていた時代に、主人公・ソフィアは親子のように年の離れた、裕福なコルネリスと結婚。安定した暮らしを送るなか、夫が夫婦の肖像画を、無名の画家のヤンに依頼する。

『チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛』より ©2017 TULIP FEVER FILMS LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

 主人公のソフィアを演じるアリシア・ヴィキャンデルは「真珠の耳飾りの少女」をオマージュした衣装や、フェルメール・ブルーのドレスをまとい、清楚だが身の内に熱い想いを秘めた女性を体現。若く美しい画家のヤンは、『アメイジング・スパイダーマン2』に出演したデイン・デハーンが演じる。そのほか、ソフィアの夫役にクリストフ・ヴァルツ、チューリップを栽培する修道院の院長役にはジュディ・デンチなど、オスカー俳優たちが出演。本作のトレイラーでは超高級チューリップに夢中になる民衆、主人公二人の許されぬ恋路、フェルメール絵画へのオマージュが散りばめられている。

『チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛』より ©2017 TULIP FEVER FILMS LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

 本作について、『怖い絵』などの著作で知られる作家で西洋文化史家の中野京子は下記のようにコメントを寄せている。

 「フェルメールは今でこそ人気画家ですが、生前はデルフトという町とその近辺で知られていただけでした。作品数は極端に少なく、自画像もなく、死後は完全に忘れられました。再発見されたのは2世紀も経ってからです。今なお謎めいた画家のままで作品を通してしか彼に触れることはできません。この映画のカメラはフェルメール世界へのオマージュに満ちています。窓辺で手紙を読む女性、鮮やかなブルーのドレス、女主人と女中の密やかな共犯関係、扉から覗き見するようなアングル、薄暗い室内に差し込む弱い光。どれもとても美しく聖性に満ち、外部の「チューリップ・フィーバー」との対比が鮮烈で、見どころですね」

 10月5日から東京・上野の森美術館で始まる「フェルメール展」とタイアップするこの映画。展覧会の開催にあわせて、本作でフェルメールが生きていた時代とその作品世界に思いを馳せたい。

編集部

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